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【経済】悩める新人につながりを 懇親自粛 オンラインでフォロー 企業模索 

2021/04/15

 新型コロナウイルス感染拡大で会食自粛を求められ、四月入社の新入社員が先輩や同期との交流不足に悩んでいる。社会人としてスタートを切る中、「歓迎会や懇親会で先輩や同期の人となりを知って、早く職場に慣れたいのに」と切実な声も上がる。企業は新入社員のモチベーションを高めようと、オンラインを活用した交流で悩みを共有してもらうなど試行錯誤している。

 ▽タブレット端末

 「資格試験に向けてどうやって勉強していこう」。四月上旬、日本生命保険の新入社員は今後のキャリア形成について、タブレット端末「iPad(アイパッド)」越しに同期社員たちへ悩みを打ち明けた。日生は約三百三十人の新入社員にiPadを一台ずつ支給。平時であれば四月は歓迎会や同期との懇親で絆を強める時期だが、今は会食が制限。新入社員同士が一体感を醸成できるようにとオンラインを積極的に取り入れる。

 iPadは研修での集団討議に活用するほか、研修後には遠隔での懇親会も開催し、多くの新入社員が画面越しに語り合う。永井秀和さんは「(資格試験など)みんな同じ悩みを持っていることが分かり、胸襟を開きやすくなった」と話す。

 ▽不安解消

 三井物産は一人一人の心身面にも気を配る。研修の習熟度の確認に加えて、新入社員から定期的に自身の状態を「晴れ」「曇り」「雨」に例えて回答してもらい、「雨」が続けば関係部署がフォローし、不安を取り除くよう努める。

 関西電力は新入社員に対して、終業後に先輩社員とのオンライン座談会を開催。社会人生活を始めるに当たって、悩みなどの相談に対応する。大阪ガスは新入社員研修でガス製造所から中継し、輸入した液化天然ガス(LNG)が都市ガスになるまでの過程を説明するなど、現場のイメージを持ってもらえるようにひと工夫する。

 ▽一体感

 ただ、工夫をせずにオンラインを取り入れるだけでは疎外感を抱くケースもある。在阪の中堅包装資材商社に入社した新入社員は「遠隔の研修だけでは、やはり職場の雰囲気が分からない。まだ先輩の顔と名前が一致しない。歓迎会もやってほしい」とこぼす。

 りそな総合研究所(大阪市)の荒木秀之主席研究員は「大事なことは新入社員が会社との一体感を持てるようにすることだ」と指摘する。コロナ禍の収束は見通せず、懇談の機会は引き続き制限される。新入社員の不安を解消し、どうやったら人間関係をうまく築くことができるか、企業の模索が続く。

同期とのオンライン懇親会に参加する日本生命保険の新入社員=千葉県浦安市で
同期とのオンライン懇親会に参加する日本生命保険の新入社員=千葉県浦安市で