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【社会】解雇 女性、非正規狙い撃ち10万人突破 出口見えず

2021/04/09

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、解雇や雇い止めは見込みを含めて十万人に達した。飲食や旅行、宿泊業などの打撃は甚大で、女性や非正規労働者を狙い撃ちしたようなケースも見られた。新型コロナは「第四波」の様相が全国で鮮明に。客足がコロナ前の水準に持ち直すまでは時間がかかるとみられ、出口は見えない。

 「閉店することになりました。全員解雇とします」。昨年六月下旬、東京都内にある飲食店の社長は急きょ集めた社員、アルバイト約二十人を前に突然、こう告げた。ホールスタッフの正社員として働いていた都内在住の五十代の女性はがくぜんとした。

 飲食店は昨年四月の緊急事態宣言に伴い休業に入り、翌五月末に再開したばかり。コロナ禍で客足が減り減給を告げられていたが、解雇されるとは考えてもいなかった。

 その後、再就職のため二十社以上に応募。今年に入り別の飲食店の契約社員になることはできたが、正社員での就職はかなわなかった。給料は約十万円減った。「面接では正社員登用もあり得るという話だったが、業界の先行きは不透明。また切られるかもしれない」と不安そうに話す。

 総務省の労働力調査で、二〇二〇年平均の非正規労働者数は前年比七十五万人減の二千九十万人。比較可能な一四年以降、初めて減少に転じた。解雇、雇い止めの増加が影響したとみられる。特に女性の非正規労働者は前年比五十万人減で、男性の非正規と比べ約二倍の減少幅だった。

 昨年の連合への労働相談は前年比約一・四倍の約二万件。パートなど非正規労働者からの割合が増加。担当者はこの数カ月の傾向として「業務態度が悪い」という不明瞭な理由での契約打ち切りが見られるようになったと分析する。

 「自分が持っていないスキルが必要な部署に異動を求められ、退職せざるを得なくなった」「妊娠を機に復職を拒まれた」…。高齢や出産育児といった事情を抱える人を自己都合退職に持ち込もうとするようなケースもあった。

 第一生命経済研究所の星野卓也主任エコノミストは、少なくとも年内は消費者の行動がコロナ前の状態に戻らず、飲食や旅行、宿泊業などは厳しい状況が続くと分析。雇用調整助成金の特例措置を五月以降、縮減する政府方針に関し「雇用に大きな打撃を与える可能性がある。縮減はタイミングありきではなく、客観的な経済データを丁寧に分析して判断するべきだ」と指摘する。