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【雇用崩壊】ホームレスに農業体験 飯田で12年前に先駆的取り組み

2009/02/08

 雇用情勢の急速な悪化で、「失業者を農業の担い手に」と期待する声がにわかに高まっている。長野県飯田市蛇沼地区の地域活性化を目指す「蛇沼八の会」は12年前、いち早く東京・山谷地区のホームレスの人々を農業体験に招いた。同会は「ホームレスの現場をよく知ってから受け入れることが必要。就農には至らなかったが、住民の間に地域活性意識が強まり、過疎化を防いだ」と、先駆的な取り組みを振り返る。

 同会は、1995年ごろ、約30世帯100人が住む地区の衰退を防ごうと、「都会の失業者に、田舎で農業をしてもらいたい」と考えた。山谷のホームレス支援団体と知り合い、準備のため、会員が山谷に通った。

 当時のホームレスは60代以上が多くて定住の見込みが薄く、実情を知る支援団体の人たちの付き添いが必要と分かった。「ならば、心を癒やす“ふるさと”になろう。蛇沼の住民も、外部の人が来ることで生活を見直すことができる」と考え直し、97年5月に農業体験を初開催した。

 それから3年間、毎年1泊2日でホームレス延べ60人が地元農家に宿泊した。山谷のボランティアには、ホームレス2人に1人程度で付き添ってもらった。ボランティア団体が交通費を負担。バス2台で蛇沼まで来てもらい、キノコの菌打ち作業を体験した。

 農業体験は、資金不足で3年で終わった。しかし、UターンやIターンなど別の形の地域活性化策につながった。受け入れに奔走した同会事務局の木下利春さん(58)は「当時と状況は違うが、支援団体の理念や調整能力を、まちづくりの観点から生かせるかどうかも、こうした取り組みには大切」と話す。

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 農林水産省が昨年12月24日からスタートした「農山漁村雇用相談窓口」には相談が相次ぎ、本省や地方農政局、都道府県などの窓口には先月28日までに7013件の相談があった。また、東京都千代田区の「全国新規就農相談センター」にも同時期、通常の倍のペースとなる549件の相談があった。