中日新聞CHUNICHI WEB

就職・転職ニュース

  • 無料会員登録
  • マイページ

【愛知】長所生かした障害者雇用に力 名古屋の法人 厚労相認定

2021/02/28

高齢者施設運営「フラワー園」

 障害者雇用で優良な取り組みをする中小企業を厚生労働相が認定する制度に、名古屋市中川区で高齢者施設を運営する社会福祉法人「フラワー園」が選ばれた。県内で2例目の認定。介護の仕事を細分化し、障害者が長所を生かせる作業に就けるようにして、定着を図っている。担当者は「生活を支える介護は仕事の種類が多く、雇用を進めやすい」と前向きだ。(出口有紀)

 ◇ ◇ ◇

 フラワー園は8年ほど前から障害者を雇用。現在は身体、知的、精神障害の5人が、特別養護老人ホーム(特養)やデイサービス施設などで働いている。

 現場での配置は、「人との関わりが苦手だが、黙々と作業に取り組む」など、障害者それぞれの特性や得意分野と、細分化した仕事をすり合わせる。フラワー園のゼネラルマネジャー吉田貴宏さん(36)は「できる部分に着目し、自信をつけてもらう」と話す。シーツ交換や洗濯など、単調な作業も多い。

 加えて、吉田さんは上司の意識の持ち方が大事だという。「一人で続けるのは孤独。相手の立場で考え、『頑張ってるね』と声を掛けられるか。障害の有無に関係なく、上司はみんなが気持ちよく働けるように動かないと」と力を込める。

 吉田さんによると、こうした取り組みを続けるうちに、障害者も休まれては困る要員になってきた。2915年2月から働く知的障害の男性(28)もその1人だ。週5日、3施設の屋外の清掃や送迎車の窓ふきに従事。当初は作業手順書に従っていたが、今は見なくても分かる。余った時間に、新型コロナウイルスの予防に欠かせない消毒作業も手伝う。男性は「毎日きれいにすることで、利用者に快適に過ごしてもらえるし、やりがいがある。他の職員も話し掛けてくれ、さみしくはない」と笑う。

 吉田さんは「隅々まで丁寧で、介護職員の負担も軽減している。仕事ができる人が100人いても、優しいチームにはなれない。支えが必要な人がいることで、『どう伝えたら聞いてもらえるか』とみんなが意識でき、バランスがとれた組織になる」と話す。

【障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度】
 2020年度に始まり、常時働く従業員300人以下の中小企業が対象。昨年12月末現在で、定着状況などの基準を満たして申請した22企業が認定された。日本政策金融公庫の低利融資を受けられるなどのメリットがある。

施設の利用者の女性と施設の周囲を清掃する男性(右)=名古屋市中川区西日置町で(フラワー園提供)
施設の利用者の女性と施設の周囲を清掃する男性(右)=名古屋市中川区西日置町で(フラワー園提供)