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【働く】70歳まで就業 企業に努力義務 4月施行 キャリア どう描く?

2021/02/12

40代後半から戦略を スキル磨き選択肢増やそう 

 希望する人が七十歳まで働けるよう、企業に努力義務を課す改正高年齢者雇用安定法が、四月に施行される。労働力確保や年金など社会保障制度の担い手を増やすことが目的で、既に一部の企業ではシニアの雇用が進む。「七十歳まで働く時代」が目前に迫る中、働き手はどういうキャリアを築きたいのか、老後の生き方も含めてしっかり練ることが必要になりそうだ。(熊崎未奈)

 「若い人と一緒に働き、社会に参加している感覚がある」。化粧品・健康食品会社ファンケル(横浜市)の川口幸子さん(67)は笑顔を見せる。

 子育てを終え四十七歳で契約社員として入社。六十五歳で定年を迎え、現在は「アクティブシニア社員」という身分で、客の注文などに応じるコールセンターのスタッフ育成を担う。仕事の内容は定年前とほぼ同じ。ただ、勤務は週四日、一日七時間半に減らした。「休みが増えて私生活の時間も確保でき、今が一番充実している」という。

 同社は二〇一七年、希望すれば、定年以降も時給制のパート社員として、年齢の上限なく働ける制度を導入した。就労日数や時間は体力や家庭の事情に応じて決めることができ、一年ごとに契約を更新。一月時点で、六十五~七十一歳の男女十四人がコールセンターなどで働く。人事担当者は「少子高齢化の中、労働力確保と同時に、顧客対応に必要な熟練した技術の継承にも結びつく」と話す。

 現在、企業には六十五歳までの雇用義務が課せられているが、四月からは七十歳までの就業確保が努力義務に。将来的には義務化も予想され、企業は(1)七十歳までの定年引き上げ(2)定年の廃止(3)再雇用など七十歳までの継続雇用(4)業務委託契約の締結(5)会社が行う社会貢献事業などへの参加支援-のいずれかの導入に努めなければならない。

 新たに加わった(4)と(5)は会社との雇用関係がない。(4)は個人事業主やフリーランスとして業務を請け負う、(5)は企業の社会貢献活動に有償のボランティアとして参加する、といったことを想定する。厚生労働省は「人によって体力や意欲、目的は違う。多様な選択肢が必要」と説明する。

 日本商工会議所などが昨年七~八月、大手に比べて人手不足が深刻な中小企業約二千九百社に行った調査によると、導入予定の制度として「継続雇用」を挙げた企業が56%で最多。業務委託契約が17%で続いた。日本は年功序列の賃金体系を採る企業が多く、人件費の負担が大きい定年廃止・引き上げや、企業側のメリットが見えづらい社会貢献事業への参加支援を制度化する企業は限られそうだ。

    ◇

◆40代後半から戦略を
◆スキル磨き選択肢増やそう

 「四十代後半にさしかかったら、六十歳以降の働き方を考える必要がある」。パーソル総合研究所上席主任研究員の小林祐児さん(37)は指摘する。

 仕事で関わりがない社外の友人や家族を相手に、これまで培ってきたスキルや経験を話すと、自身を客観視するのに役立つ。転職する・しないに関係なく、転職エージェントに登録することも、自分の市場価値が分かって効果的。必要なスキルを知り、それを磨くことにつなげたい。

 老後資金に不安がなければ、賃金を気にせずにやりたい仕事をしたり、仕事とは別にボランティア活動に精を出したりすることが可能。退職金や年金以外に、投資による資産運用なども検討しておくといい。

 「多くの企業が定年とする六十歳や六十五歳の節目に、いかに多くの選択肢を持てるかが大事」と小林さん。勤務している会社で、希望する働き方や収入がかなうかは不透明だ。「今の組織に勤めるしかないという状況を回避できるようにしてほしい」と話す。