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【社会】求人倍率 45年ぶり下げ幅 20年 リーマン超え0.42ポイント

2021/01/30

非正規労働者 初の減

 厚生労働省が二十九日発表した二〇二〇年の有効求人倍率は一九年比〇・四二ポイント減の一・一八倍で、一九七五年以来四十五年ぶりの大きな下落幅となった。新型コロナウイルスの感染拡大で企業の先行き懸念が強まり、求人を大きく縮小したことなどが影響した。新規求人倍率もリーマン・ショック後の〇九年以来十一年ぶりに低下して一・九五倍となった。

 総務省が同日発表した二〇年平均の非正規労働者数は、前年比七十五万人減の二千九十万人だった。比較可能な一四年以降初めて減少に転じた。女性や高齢者の就労を背景に増え続けていたが、感染拡大に伴う企業の経営悪化で、解雇や雇い止めが増加したためとみられる。

 二〇年平均の完全失業率は0・4ポイント上昇の2・8%、完全失業者数は二十九万人増の百九十一万人で、ともに〇九年以来十一年ぶりに増加。職に就いているのに働いていない休業者数も八十万人増の二百五十六万人で過去最多となった。

 二〇年十二月の新規求人数は七十二万二千百八十一人で、前年同月比で十二カ月連続の減少だった。企業は景気回復の兆しが見えると増産や経営拡大のために新たに求人を出す。このため、新規求人数は直近の景気動向を映す「先行指数」とされる。新規求人数の減少は経済活動の低迷を表しており、緊急事態宣言の再発令に伴い厳しさを増す恐れがある。

 有効求人倍率はハローワークに申し込んだ求職者一人当たりの求人数を示す。最も下落したのは石油危機の影響を受けた七五年の〇・五九ポイントで七四年の〇・五六ポイントが続く。今回の〇・四二ポイントはそれに次ぐ過去三番目の下落幅。リーマン・ショック後の〇九年(〇・四一ポイント)を超えた。

 田村憲久厚労相は同日、求人を続けている業種もあることから「リーマンの時のように雇用が一斉に消えたという状況ではない」と述べ、求職者とのマッチングを進めたい考えを示した。

    ◇

◆コロナ失業 世代、職種問わず
◆名古屋のハローワーク前 苦しさ吐露

 長引く新型コロナウイルスの感染拡大で、雇用情勢の悪化が鮮明になっている。「貯金が底をついたらどうしよう」「ちゃんと仕事をして、最低限の生活をしたい」。二十九日に名古屋市内のハローワークを訪れた人は、口々に生活の苦しさや不安を吐露した。

 「そろそろおしりに火が付いてきた」。底冷えする同日午前、名古屋市中区の「ハローワーク名古屋中」を訪れた無職の男性(28)は焦りをにじませた。

 昨年四月、人材派遣会社に正社員として入社し、施設管理部門に配属された。本来なら東京五輪に向けて建設されたホテルなどの管理運営をするはずが、仕事は全くなく、オンラインでの研修が続いた。

 同十一月には、会社側に解雇か工場勤務の二択を迫られ、退職を希望。「自己都合で辞めたことにしてほしい」と言われたが、交渉を重ねて会社都合で退職した。現在は少ない貯金を取り崩しながら暮らし、この日は失業保険の申請に来たという。

 ハローワークには、スーツ姿の男性や私服の女性らが頻繁に出入りした。昨年九月、新型コロナの影響による業績悪化を理由に、事務をしていた派遣先が部門ごと廃止された五十代女性は、手取りで十七万円の月収がなくなり「食費を切り詰めている」と話した。求職中の女性(31)は「父と妹に頼って生活しているが、このままでいいわけがない」とつぶやいた。

 新型コロナの影響で仕事を失った求職者の実態を把握しようと、ハローワーク前で行われた愛知県労働組合総連合(愛労連)のアンケートでは、七割弱が生活について「大変苦しい」「苦しい」と回答した。愛労連の竹内創事務局長代行(53)は「幅広い年代、職種の人が仕事が見つからないと相談に来ている」と話す。

 生活困窮者を支援するNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」(東京)の大西連理事長(33)は「例年の一・五倍の相談を受けている。製造業が打撃を受けた(二〇〇八年の)リーマン・ショックと比べ、全産業的に厳しい状況だ。生活保護の前に重層的なセーフティーネットを作ることを政府には求めたい」と訴えた。(蓮野亜耶、森若奈)