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【社会】コロナ労災知って 全国1133件 地域や業種で偏り

2020/11/29

支援団体「無・軽症でも申請を」 職場が感染源なら認定

 仕事中に新型コロナウイルスに感染し、労災と認められたケースが今月二十五日現在、中部地方をはじめ全国で千百三十三件に上ることが、厚生労働省などへの取材で分かった。申請や認定件数は地域や業種で差があり、労働者の支援団体からは「新型コロナで労災を認められることが浸透していないのではないか」と、国の周知不足を指摘する声もある。(丸田稔之)

 ◇ ◇ ◇

 厚労省によると、職場が明らかに感染源の場合は労災と認定される。全国各地の職場でクラスター(感染者集団)が発生する中、労災申請は二十五日時点で二千百六十七件。既に認定された千百三十三件の業種別では、医療従事者(医師や看護師など)が九百十件と八割を占める。医療従事者以外(運輸、建設、小売り、宿泊・飲食サービス業など)は二百十五件にとどまった。海外出張者は八件だった。

 医療従事者の認定割合が多いのは、対象者が多いのに加え、感染経路が判明しなくても原則、労災が認められるのも一因とみられる。厚労省の担当者は「患者と接する機会が多く、他の職種と違って感染リスクが高い」と説明。原因が業務外の場合は認められない。

 各労働局への取材では、申請数に地域差も見られる。愛知は今月十二日時点で申請が七十七件で、うち労災認定されたのは二十二件だった。残り五十五件は審査を継続中。職種の内訳は明らかにしていない。

 これに対し、北海道では十月三十日時点で申請が百九十九件で、認定は百四十件。同様に感染拡大が深刻な愛知をそれぞれ、大きく上回っている。

 同じ中部地方でも、申請が滋賀では今月十九日時点で五十三件に上ったのに対し、三重と長野はそれぞれ十二日時点で二件だった。認定件数は三県とも非公表。岐阜は十六日時点で申請十一件のうち、六件が認定された。

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◆支援団体「無・軽症でも申請を」
◆職場が感染源なら認定

 「子育て中で、休業で賃金が支払われないと困る」。労働者らの労災認定に向けた手続きを支援する市民団体「名古屋労災職業病研究会」には、愛知県内の医療機関に勤務し、新型コロナに感染した三十代の事務職員から切実な声が寄せられたという。

 相談員の成田博厚さん(48)によると、職員は七月に感染。陰性になっても倦怠(けんたい)感が収まらず「いつになったら治るのか」と不安が続いた。成田さんらのサポートで、労災を申請した。

 また、七月に感染した七十代の介護職員はせきなどの症状が続き、今も仕事に復帰できていない。労災認定を受けたため、医療費の自己負担がなく、賃金の八割に当たる休業補償も支払われているという。

 医療従事者以外でも、職場が明らかに感染源の場合は労災認定される。だが、成田さんは「医療従事者以外は、件数が少ない印象。制度が周知されていない」と指摘。

 第三波で感染者の急増に警戒が強まる中「(国は)請求を勧奨するべきだ。労災はいざという時の命綱。労働者も感染した場合、軽症や無症状でも積極的に申請した方がいい」と話す。

新型コロナウイルス感染症の労災申請について説明する成田博厚さん=名古屋市昭和区で
新型コロナウイルス感染症の労災申請について説明する成田博厚さん=名古屋市昭和区で