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【愛知】勤労女性集い、教養高める場 「働く婦人の家」閉館へ

2020/10/27

一宮、稲沢市 「目標達成」、惜しむ声も

 女性が講座で学んだり、サークル活動を楽しんだりする一宮市の公共施設「働く婦人の家」(同市音羽一)が来年三月末に閉館することが決まった。市は「『勤労女性の福祉の増進』という目標を達成したため」と説明するが、利用者からは残念がる声も出ている。同じ施設は稲沢市も本年度で閉館を予定し、県内では全て廃止されることになる。(下條大樹)

 二十二日午後、「ききょう会館」内にある施設では、五十~八十代の女性十人が卓球を楽しんでいた。コロナ禍で使用が中止され、八月に再開したばかり。閉館について聞くと、市内の無職女性(75)は「全然知らなかった。皆と集まって、わいわいとやるのが楽しいのに。ぼけてしまう人も出るのでは」と心配した。

 「働く婦人の家」は一九七二年に施行された勤労婦人福祉法に基づき、女性が職場や家庭で役立てるための実習や、相談、息抜きの場として全国で設置された。一宮は九〇年に開館。女性向けだが、男性も一部利用でき、近年も年間延べ三万人ほどが利用した。体操や社交ダンスの市民サークルや、英会話やヨガなどの講座が開かれている。

 同法が男女雇用機会均等法に移行したことで、働く婦人の家の位置付けも年々あいまいになっていた。谷川高志館長は館の利用状況を認めつつも、「今ではカルチャースクールやインターネットでも学べ、開館当時と比べて環境が変わってきた」と説明。人件費、管理費などに年間五千万円かかっていることや、利用者の七割弱が六十歳以上と偏りがあることから「市の施策が多岐にわたる中、施設の活用法を見直すことにした」と話した。

 市は解体せず、公共施設としての利用を中心に検討するが、来年四月以降の具体的な方針は決まっていない。混乱を避けるため、積極的には利用者に廃止を伝えていないという。

 市によると、全国には「働く婦人の家」や同じ目的の施設が百三十弱あるが、閉館が進む。県労働福祉課によると、県内にもかつて少なくとも七館あったが、残るは一宮、稲沢両市の二館のみ。稲沢市も施設が入る社会福祉会館の解体と合わせて来年三月末で廃止する。市生涯学習課の担当者は「今では貸館業務が主で、近くの公民館で代替できる。勤労女性に限定する意義は薄れている」と話す。

サークルで卓球を楽しむ市民ら=一宮市音羽1の「働く婦人の家」で
サークルで卓球を楽しむ市民ら=一宮市音羽1の「働く婦人の家」で