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【くらし】福利厚生も「コロナ対応」在宅勤務の食サポート

2020/10/05

届ける「社食」 出前シェフ

 新型コロナウイルスの影響で、出社せずに自宅や出先で仕事をする人が増えている。会社に備えられた社員食堂(社食)の利用者が減る中、企業の中には、従業員の自宅などに食事を届けたり、外食費を補助したりするところも。働き方の変化に合わせ、企業が社員に提供する福利厚生サービスを見直す動きが広がっている。(平井一敏)

 9月初め、インターネット広告会社SMN(東京)の名古屋オフィス(名古屋市中区)。社員の後藤匠さん(30)の元に「社食」が届いた。サバのみぞれ煮やロールキャベツ、おでんなどが真空パックされた総菜九品と、レトルトご飯のセット。オフィス向けの総菜提供サービスを手掛けるOKAN(東京)が5月に始めた「仕送り便」だ。どの総菜も添加物をほとんど使っておらず、電子レンジで温めるだけで食べられる。

 名古屋オフィスはコロナ禍の6月に開設。所属は後藤さん1人で、社食もない。仕送り便は、契約企業の依頼を受けて月1回、在宅勤務をする従業員の自宅などに総菜を送るサービスだ。従業員が支払うのは総菜1個につき100円。1件当たり約3000円の手数料などは勤務先が負担する。この日初めて受け取った後藤さんは「忙しくて昼ご飯を買いに行く暇がない時もあるので助かる」と笑顔だ。

 在宅勤務者の増加を受けSMNが仕送り便を導入したのは7月。約150人が働く本社では、毎月20人の希望者を募集し、提供している。担当する課長の松本裕文さん(45)は「福利厚生を充実させることで、従業員の生産性や創造性は向上する」と期待。「多様化する働き方に応じたサービスをタイミング良く導入することが大事」と話す。

 「いつでもどこでも使える福利厚生サービスが求められている」と言うのは、食事補助サービス「チケットレストラン」を運営するエデンレッドジャパン(東京)営業・マーケティング部長の高橋偉一郎さん(45)だ。同サービスの電子カードは全国6万店以上の飲食店やコンビニで利用でき、延べ2000社以上が導入。月に3000円ほどを補助する企業が多く、国の緊急事態宣言が発令された4月以降、企業からの問い合わせが急増している。

 高橋さんは「社員食堂をはじめ、今までの福利厚生は会社に出勤することを前提に考えられていた」と指摘。働く場所によって受けられるサービスに差が出ないよう内容を見直し始めた企業は少なくない。コロナ禍で中止になった社員旅行や懇親会などの予算を食事補助に回す企業もあるようだ。健康への意識も年々高まる中、「健康的な食事はお金がかかる。食事補助を提供する企業はさらに増えるだろう」と予想する。

 名古屋市内で2つの歯科医院を運営する「医療法人9020」は4月、管理栄養士や調理師らが家庭に出向いて食事を作り置きする法人向けサービス「シェアダイン ウェルネス」を導入した。利用者はフレンチや和食など好みのシェフを選んで料理を頼むほか、食の悩みを相談したり、レシピを教わったりもできる。

 料金は月2回で1万3600円だが、企業が費用の一部を負担。9020の場合、4割を援助している。歯科衛生士や受付などのスタッフ70人の大半は女性で、これまでに延べ10人ほどが利用した。コロナ禍で外食がしにくい状況が続く中、法人理事の神保侑希さん(37)は「毎日の食事作りに悩んでいる人もいる。子育てや家事の負担を軽減し働きやすくなれば」と期待する。