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【社会】訪問介護増えているけど… ヘルパー不足深刻

2020/09/22

求人倍率15倍 平均年齢54歳 「専門性評価してほしい」

 介護が必要な人の自宅に訪問し、日常生活を助けるホームヘルパーの人手不足が深刻になっている。厚生労働省によると、2019年度の有効求人倍率は15.03倍。求職者1人に15件の求人がある計算だ。訪問介護の利用者はここ10年増加している。ヘルパーの高齢化も進み、在宅介護の支え手が危機的な状況だ。

 ヘルパーの仕事は大きく2つに分かれ、排せつ、食事、着替えの「身体介助」と掃除、洗濯、調理の「生活援助」がある。有効求人倍率は13年度には3.29倍だったが年々上昇。同じ介護職でも特別養護老人ホーム(特養)など施設の介護職は4.31倍(19年度)と大きな差がある。

 ヘルパーの平均年齢は54・3歳。年代別に見ると、60代以上が39%を占め、20代は4%にとどまる。公益財団法人「介護労働安定センター」の調査(19年度)では訪問介護事業所の81%が人手不足と答えた。

 ヘルパーは非常勤が多く、家族の扶養内で働く人も多い。京都ヘルパー連絡会(京都市)の桜庭葉子代表世話人は「介護保険が始まった20年前は他業種と比べて比較的時給が高く、資格を取ってヘルパーになる人が多かったが、その後賃金は下降傾向で人手不足に。どこの法人もぎりぎり、かつかつの人員だ」と指摘する。

 新型コロナウイルスの流行で離職者が出た事業所も多い。桜庭さんは「職員採用のために民間の職業紹介事業者に払う手数料は数10万円に上る例もある。政府や自治体に職員を安定的に確保できるように求めたい」と訴える。

 訪問介護の事業者がそろって懸念するのは「専門性を正当に評価されていない」ということだ。特に要介護度が低い人の生活援助は一部で「家政婦代わりに使われている」との批判があり、財務省は介護保険から制度を外し、市町村事業に移したい考え。

 約160人のヘルパーが所属するNPO法人グレースケア機構(東京)の柳本文貴代表は「在宅高齢者の暮らしをみとりまで含めトータルに支え、思いに添ったケアができるやりがいある仕事なので、専門性を評価して介護報酬を引き上げてほしい。このままでは事業者も疲弊して安く使い捨てられる」と懸念している。

利用者の自宅を訪問し介護するホームヘルパー=3月、東京都内で
利用者の自宅を訪問し介護するホームヘルパー=3月、東京都内で