2020/09/10
ナプキン主流 脱プラの動き
生理用品が多様化している。主流だった使い捨ての紙ナプキン以外に、布ナプキンや経血量が多くても漏れない生理用ショーツ、経血を膣(ちつ)内で受け止める月経カップなど、繰り返し使えて環境にも配慮した商品が次々に登場。時代とともに形を変えてきた生理用品は、女性の社会進出とも軌を一にしている。(長田真由美)
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愛知県あま市のスギ薬局七宝店。吸収力や肌触りの良さをうたった紙ナプキンが並ぶ。店長の小川祐樹さん(31)によると、扱う生理用品二百~三百種類のほとんどが、使い捨ての紙ナプキンという。
市場調査を手掛けるインターワイヤード(東京)が二〇一三年、女性約三千三百人に実施した調査によると、自分で買う生理用品は紙ナプキンが68%で最多。膣内に挿入するタンポン21・6%、繰り返し使える布ナプキン5・3%だった。
「生理用品の社会史」の著者で、歴史社会学者の田中ひかるさん(49)は、タンポンも多く使われる欧米と違い、紙ナプキンが多い理由を「日本の商品は性能がいいため」と話す。紙ナプキンの素材は、プラスチック製の不織布や防水フィルム、吸収材など紙おむつと同じ。主に石油由来だ。日本製は、海外商品と比べて形や種類が豊富で、吸水力にも優れているという。
日本で紙ナプキンの原型となる「アンネナプキン」が登場したのは一九六一年。それまで女性は布や脱脂綿を膣の中に入れたり、ナプキンのように当てたりしていた。ただ蒸れやすく、脱脂綿が動いて経血が漏れることも。田中さんは「女子専用トイレもない時代。働く女性は大量の脱脂綿を用意していた」と言う。
そうした中で発売されたアンネナプキンは新聞や雑誌に積極的に広告を掲載。「生理は隠すべきもの」という印象を変え、吸収力の高さは安心感を与えた。時代は高度成長期。「女性の社会進出に大きく貢献した」と田中さんは言う。
脱プラの動き
それから約六十年。環境を守る視点を交え、今また生理用品が変わり始めた。その一つがショーツ。「ベアジャパン」(東京)は七月末、高い吸水力を持つ「生理ショーツ」を発売した。経血量は多い日で三十~五十ミリリットルだが、百二十ミリリットルを吸収する。尿漏れ下着の開発技術を応用し、特殊な加工を施したポリエステルを素材に採用。乾きやすくサラサラした状態が続く。
一枚七千五百九十円と高めだが、生産が追いつかないほど好評という。「働く女性の中には、自分のタイミングでトイレに行ってナプキンを替えられない人もいる。漏れの不安がなくなる」と代表の山本未奈子さん(44)。同社は、女性一人が生涯に使う紙ナプキンを約一万二千枚と試算。洗えば何度でも使えるショーツを「生理用品も脱プラスチックの動き」と話す。
ごみが出ない点ではシリコーン製の月経カップも新しい。畳んで膣に入れ、使用後はたまった経血をトイレに流す。国内で初めて月経カップを開発、二〇一七年から販売する「イマリ」(佐賀市)の売り上げは三年間で十倍に。累計一万二千個を売った。容量は十八ミリリットル。ウェルネス事業担当の芳野朋美さん(46)は「紙ナプキンによるかぶれ、においの心配がない」と言う。
「生理期間を快適に過ごすための選択肢が増えれば女性の活動の幅は広がる」と田中さん。それが環境にも優しいものであれば、意義は大きい。
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