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【愛知】愛知求人倍率 全国下回る 統計史上初1.07倍

2020/09/02

製造業不振 嘆き
安定した仕事を 採用考えられず 

 厚生労働省によると、愛知県の七月の有効求人倍率(季節調整値)は前月から〇・〇七ポイント下がって一・〇七倍となり、統計が始まった一九六三(昭和三十八)年以降、初めて全国平均(一・〇八倍)を下回った。愛知労働局は「長年ものづくりの中心として全国をけん引する地域だったが、米中貿易摩擦などの国際情勢に新型コロナウイルスが加わり、影響が製造業に強く表れた」と分析している。

 同県の有効求人倍率は、昨年四月に一・九九倍となったのをピークに、十五カ月連続で低下。二〇〇八年九月のリーマン・ショックをはさんだ同年五月から〇九年六月までの十四カ月を超え、一九九二年一月から二十七カ月にわたって低下が続いたバブル崩壊期に次ぐ史上二番目の長さとなった。

 愛知労働局は、要因として愛知県経済を支える製造業の求人減を挙げる。米中貿易摩擦を背景に、二〇一九年に入って製造業の求人数は前年同月を下回る状況が続き、コロナ感染が国内で広がった今年三月から減少幅が拡大。特に自動車産業では、五~六月にかけて前年の二~三割にとどまり、七月も五割に満たなかった。

 労働局の担当者は「感染が落ち着いていた六月後半から七月にかけて求人も活発化したが、第二波で再び鈍化している」と分析し、状況の注視を続ける。

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 七月の全国の有効求人倍率(季節調整値)は一・〇八倍で、一・一一倍だった前月から〇・〇三ポイント落ち込んだ。

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安定した仕事を
採用考えられず

 ものづくりで日本経済を引っ張ってきた愛知県の有効求人倍率が、全国平均を下回った。製造業などの業績悪化で職を失い、求職を強いられる人たちは「業種は問わない。早く仕事を見つけたい」とあせる。

 名古屋市熱田区のハローワーク名古屋南では一日、コロナ禍で失業した人ら約四十人が不安な表情で集まっていた。勤務先のメーカーが七月に倒産した同市南区の女性(56)は「若い人も失業している。高齢の私は雇ってもらえないかもしれない。業種を選んでいる余裕はない」と嘆いた。別のメーカーから九月末で解雇されるという同市緑区の男性会社員(47)は「早く安定した仕事を見つけたいが、製造業は無理だろう」とため息をついた。

 外国人労働者の悩みも深い。電話取材に応じたフィリピン人女性(40)は、三河地方の自動車部品工場に勤めていたが、五月で派遣切りにあったという。三十万円あった月収は生活保護の九万円のみに。「日本人と同じように働いてきたのに、仕事がなくなると外国人は真っ先にクビになる。おかしい」と憤った。

 外国人労働者らを支援する労働組合「名古屋ふれあいユニオン」の鶴丸周一郎委員長は「休業状態の企業もあり、年末にかけて雇い止めが増える恐れがある」と懸念を示した。

 企業側の現状も厳しい。県内の自動車向けゴム部品メーカーの幹部は「米中貿易摩擦で市況が下がり気味だったところに、新型コロナが追い打ちをかけた」と語る。工場の操業を週一回停止した六、七月と比べれば生産は回復しつつあるが、元の水準には程遠いという。「当面は厳しい状態が続くので、採用はとても考えられない」と明かした。(大野沙羅、清水大輔、佐久間博康)

求職者(右側)の職業相談を受ける職員たち=1日午後、名古屋市熱田区のハローワーク名古屋南で(野村和宏撮影)
求職者(右側)の職業相談を受ける職員たち=1日午後、名古屋市熱田区のハローワーク名古屋南で(野村和宏撮影)