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【岐阜】クルマエビ養殖に製造の技 関の東海理研

2020/08/25

作業負担軽減し高齢者雇用へ

 金属精密加工・セキュリティー機器製造の東海理研(関市武芸川町谷口)が、同市の旧板取中学校給食センターの設備を活用してクルマエビの養殖に乗り出した。同社独自の製造やモノのインターネット(IoT)の技術を生かして作業負担を軽減し、地元の高齢者の雇用確保を目指す。(鈴木太郎)

 百歳まで現役で働くビジネスモデルを模索していた佐藤明広社長(61)が、社内のプロジェクトとして始動させた。野菜の水耕栽培など複数の案を検討し、初期投資と作業者の負担の少なさから、クルマエビの養殖に決めた。

 携わるのは、佐藤社長と社員二人。水が使える環境を近場で探し、六月一日に市から場所を借りて水槽を設置した。近くの板取川温泉の長屋学支配人(72)が計画に賛同し、温泉水十トンを無料で提供。エビは海水産のため、塩を入れた温泉水を循環ろ過して育てる。

 水槽は自社の板金加工技術で設計。全自動の給餌器を置いたほか、生産量の向上に生かすため、カメラや水温計、pH計などで逐一データを取るシステムも社内で用意した。

 佐藤社長がほぼ毎日通って面倒を見る。六月二十六日に最初のエビを育て始め、二ミリだった体長は二カ月で四センチ前後に成長。佐藤社長は「徐々に大きくなる様子を見るのは楽しく、自分の生きがいになっている」と目を細める。

 来春までには食用に適した十センチ前後まで大きくなる見込み。一年目は社内や取引先などに配って味や見た目を評価してもらい、本格出荷は二年目以降を目指す。同社では本年度中にも、養殖に携わる七十歳以上の高齢者二人を雇う方針。軌道に乗ったら、事業を別会社として独立させ、ウナギやサツキマスの養殖にも乗り出したい考えだ。

 長屋支配人は「エビが市場に出回ると温泉の宣伝にもなるし、地元で仕事の場が増えるのもありがたい」と期待する。佐藤社長は「株杉や川浦(かおれ)渓谷、温泉といった観光資源と絡め、板取という場所に付加価値を付けたい」と語った。

自社設計した水槽で育つクルマエビに餌やりをする佐藤社長=いずれも関市板取で
自社設計した水槽で育つクルマエビに餌やりをする佐藤社長=いずれも関市板取で
すくすくと育つ体長1センチほどのクルマエビ
すくすくと育つ体長1センチほどのクルマエビ