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【暮らし】「会社の配慮」複雑な思い コロナ対応、基礎疾患ある労働者

2020/07/27

 新型コロナウイルスの感染者が再び増える中、感染すると重症化しやすいとされる基礎疾患のある働き手の胸中は複雑だ。仕事の量を減らすといった会社側の配慮をありがたく思いながらも、「他の人と同じように働きたい」という願いが渦巻く。生まれつき心臓病を患う人らの団体「全国心臓病の子どもを守る会」に患者や家族約100人が寄せた声から考える。

 (佐橋大)

 東京都内の大手企業で、ビッグデータなどを扱うデータエンジニアとして働く村田俊樹さん(27)。四〜五月、社員は原則、テレワークに。六月以降も在宅勤務が強く推奨され、先天性の心臓病がある村田さんも自宅で仕事を続けている。

 日本循環器学会によると、心臓病の人が新型コロナにかかりやすいというデータはない。ただ、感染すると、心臓は肺などダメージを受けた臓器に普段より多くの血液を送ろうとして負担がかかり、持病が悪化する可能性があるとしている。

 村田さんは入社時に、持病について伝えてある。仕事の内容は病気のない人とほぼ同じだが、量は残業をしないで済むよう普段から配慮されているという。上司から在宅勤務の打診を受けたのは、国が全国一斉の休校方針を示した二月末。持病のない同僚はオフィスで仕事をしている時期だった。

 自身も感染の不安を感じていたため「ほっとした」と振り返る。一方、ヤマ場を迎えていた仕事は、外にデータを持ち出すことに伴う安全上の問題から、同僚に引き継ぐことに。仕事をやり遂げられない悔しさはあったが、病気への理解がうれしかった。

 東海地方の三十代女性も生まれつき心臓の機能が弱い。普段は病気などで支援や配慮を必要とすることを示すヘルプマークを携帯している。医療機器の操作や点検をする専門職として週四日間、総合病院で働いているが、やはり感染が心配だ。ただ、在宅ではできないため、緊急事態宣言発令中も勤務を続けた。

 幸い、勤務先の病院は感染リスクや体への負担を考えた上で仕事を振り分けてくれる。主治医の「状況によっては休めるよう、診断書を書いておく」という言葉も安心材料だ。

 一方、会社側の気配りを寂しいと思った人も。障害者雇用で保険会社に勤める北関東の二十代女性は、緊急事態宣言が全国に拡大された四月半ばから二週間、在宅勤務になった。一般の社員もテレワークになったものの、他の人に課されたリポートの提出は求められなかった。「思いやってくれた」とは感じたが「疎外感があった」と話す。

 心臓病だけでなく、呼吸器系疾患や糖尿病など疾患の種類や状態、さらには感染リスクをどう受けとめるかも人それぞれだ。新型コロナを巡り、持病のある人をどう扱うか、国などによる一律の指針はなく、判断は各企業にゆだねられている。守る会が二〇一八年に行った生活実態調査によると、正規雇用の九十人のうち、病気を職場に伝えている割合は87%。当事者は自身の症状をきちんと知らせ、どういうことを望むか、望まないかを具体的に伝えておくことが大事だ。

 一方で、守る会会長の神永芳子さん(62)は「テレワークや電車の混雑を避けるフレックスタイム制の普及などは大きなチャンス」と指摘。「持病や障害のある人や子育て世代などにとって、力を発揮しやすい職場づくりにつながる」と説明する。「過剰に心配して、仕事をさせないとか、やめさせるとかいったことがないようにしてほしい」と訴える。

自宅でパソコンを使い仕事をする村田さん=東京都内で(村田さん提供)
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配慮が必要と知ってもらうため、東海地方の女性はヘルプマークを持ち歩く
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