中日新聞CHUNICHI WEB

就職・転職ニュース

  • 無料会員登録
  • マイページ

【愛知】私たちのシュウカツ 安城特別支援学校の1年

2020/07/17

7月・企業での実習 (上)
面接練習 教員たちも熱

 安城市の安城特別支援学校高等部3年生のうち、就職を目指す生徒たちの企業での現場実習が六月中旬から始まった。生徒は「普段通りの実力が出せるように」と面接練習にも取り組み、企業側は「不安なく実習できる環境を」と準備を整えている。(四方さつき)

 ◇ ◇ ◇

 事実上の入社試験ともいえる企業実習の受け入れ先がなかなか決まらないなど、就職活動はコロナ禍で大きな影響を受けた。

 今年3月時点で企業への就職を目指す約20人の生徒全員に実習先のあてがあったが、コロナ禍でほぼ白紙状態になった。感染拡大に伴う全国的な規制が緩和された5月末時点でも、実習が決まっていたのは6人だった。一時は教職員に悲観的なムードが漂った。しかし生徒のこれまでの努力や学校側からの粘り強い働き掛けが、事態を少しずつ動かした。

 7月7日。「6月中旬から実習が決まり始めました」と話す進路指導主事、説田智洋教諭の顔がほころんだ。現時点で就職を希望している19人のうち、16人の実習先が決まった。9月中旬まで順次、企業へ向かう。

 残る3人のうち1人は、2年次の実習が評価され「就職に結び付きそう」。あと2人も面談が予定されるなど前へ進む。説田教諭は「生徒ができる仕事があるか、実際に職場を見せてもらって話し合うなど、地道に関係を築かせてもらったおかげ」と感謝する。

 目の前に迫った実習に向け、生徒たちは授業で面接練習などに取り組んでいる。6月22日に授業で行われた初めての面接練習では、緊張のあまり右手と右足が同時に前に出たり、扉をしっかりと開ききれないまま入室しようとして肩をぶつけたりする生徒が続出。担任の黒岩愛里教諭らは「目を見て話すと、真剣な気持ちが伝わるよ」「大きな声が出るようになった。落ち着いていつもの調子でやれば大丈夫だからね」とアドバイスした。

 志望動機や自分の思いを聞かれた時にスッと言葉が出てくるように何度も繰り返して練習する。全員がしっかりと力を発揮できるようにと、教員たちの指導にも一層の熱が入る。

 実習を控えた生徒には、職場でのやりとりを念頭に個別指導もする。2年次と同じ企業での実習を7月末に控えた鈴木さん(18)は今月7日、担任の林正記教諭と向き合った。

 林教諭は職場までの行き方や服装、持ち物などを確認した後、「実習中の目標を教えてください」などと質問した。鈴木さんは「2年生の時の実習では、もっと作業スピードを上げようと言われました」「今回はチームで協力し、声を掛け合って作業したいです」とはきはきと答えた。

 「学校の実習でも皆に積極的に声をかけてくれているよね。失敗しても大丈夫。頑張って」と励ました林教諭。鈴木さんは「緊張しますが、頑張ります」と笑顔を見せた。