中日新聞CHUNICHI WEB

就職・転職ニュース

  • 無料会員登録
  • マイページ

【岐阜】新型コロナ テレワーク一部部署止まり 県内企業

2020/06/03

活用に期待も… 安全面や費用負担が課題

 新型コロナウイルス感染防止対策として、情報通信技術(ICT)を利用して場所や時間にとらわれずに仕事をする「テレワーク」が県内の企業でも導入されている。感染の第二波に備えるだけでなく、生産性を上げるためのツールとしても今後の活用が期待されるが、多くの企業では導入が一部の部署にとどまっている。(浜崎陽介)

 情報処理サービスの「電算システム」(岐阜市日置江)は、3月1日から東京オフィスでテレワークを開始。県独自の非常事態宣言が出された4月10日から、岐阜本社や大垣市のテクノセンターなど全社的に導入した。

 自宅のパソコンなどから社内システムにアクセスできる仕組みに変え、多い時は社員約600人のうち半数以上が対象になった。東京オフィスでは社員の七割以上に上った一方、マイカー通勤が多く、セキュリティー性の高い情報を取り扱う岐阜本社は2割ほどだった。

 主にシステム開発や営業部門で活用され、テレビ会議システム「Google Meet」を用いて、社員間でのやりとりをしたり、顧客と打ち合わせたりする。システム開発担当の古山文浩さん(54)は「リモート(遠隔)で普段と変わらない仕事ができ、十分に成果は出る」と歓迎する。営業担当の橋本貴史さん(38)も「新規開拓はしづらいが、問題なく商談を進められる。移動時間も短縮できる」とメリットを話す。

 設計会社の「TAE設計室」(岐阜市)は、子育て中の女性社員、障害のある社員、感染リスクの高い年配の社員らを対象に4月、テレワークを導入した。ビデオ会議アプリ「Zoom」で、図面やデザインについてやりとり。必要に応じて週に1、2回出社し、進捗(しんちょく)状況や課題を共有する。

 精神疾患があり、薬の副作用で車を運転できないデザイン担当の丹賀沢賢(にがさわまさる)さん(33)は公共交通機関を利用し、片道一時間半かけてオフィスに通っていたが、テレワークのおかげでその必要がなくなった。「安全だと思った。もし感染すれば、同僚にうつす心配もあった」と振り返る。

 同社は新型コロナ収束後もテレワーク利用を続ける予定で、山田妙子社長は「品質を落とさずに個性が出るものができるなら、従業員の時間を縛らなくてもいい」と語る。

 岐阜商工会議所が4月に行ったアンケートでは、岐阜市内の93社のうち実施40社、実施予定17社で、計6割を超えた。ただ、厚生労働省がオフィスワーカーを対象にした4月の調査では、県内の実施割合は9・88%で全国平均の26・83%を大きく下回った。

 同商議所によると、県内は現場仕事や中小企業が多く、実施している企業でも導入は一部の部署に限られるケースが多い。また、感染状況が落ち着けばほとんどの企業が元に戻す方針だという。

 アンケートでは、セキュリティー面の不安や、設備導入費用の負担を課題とする意見も寄せられた。同商議所総務管理課長の市川元英さん(41)は「地方の中小企業にとって乗り越えなければならない壁は多い」と指摘する。

 慶応大大学院の鶴光太郎教授(比較制度分析)の話 今のテクノロジーをもってすれば、オフィスワークであれば基本的にテレワークはできる。働く人がベストパフォーマンスを発揮する場所を選択できるようにしていくことが大事。テレワークで生産性が高まることが確認された国内外の研究もある。活用すれば、地方にいても東京の会社の仕事ができるため、地方へ移住する動きも出てくるだろう。

テレビ会議で打ち合わせをする電算システムの社員ら=岐阜市日置江で
テレビ会議で打ち合わせをする電算システムの社員ら=岐阜市日置江で