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【暮らし】休み方、今こそ見直し 働き方の変革迫る新型コロナ

2020/04/27

 ゴールデンウイーク(GW)が始まった。例年ならこの時期、多くの人が心を躍らせているはずだ。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない今年は、外出を控えることが強く求められる。国や自治体の要請、経営が苦しい会社の都合などによって、働きたくても休まざるを得ない人も多い。そもそも「休み」とは何のためにあるのか。

 「人との接触を八割減らしてほしい」。16日、安倍晋三首相が緊急事態宣言の対象地域を全国に拡大してからも、名古屋市のJR名古屋駅では朝、マスク姿で会社に急ぐ人々の姿が見られる。職種によっては、在宅勤務ができない人もいるだろう。

 ただ、もともと日本人は「休み下手」だ。新型コロナの感染が広がり始めた2月上旬、東京の転職支援会社が全国の労働者約240人に聞いたところ、8割余りの人が「体調が悪くても無理して出社したことがある」と回答。人手不足を理由に挙げる人が多かったほか、「休むと信用を失いそう」「次の出勤時に気まずくなる」など周囲の評価を気にする声が目立った。

 労働問題に詳しい労働政策研究・研修機構研究所長の浜口桂一郎さん(61)は「他の人が頑張っている中、自分だけが休むことに後ろめたさを感じるのだろう」と指摘。調和を重んじる日本人の精神文化に加え、休まないことを意欲の表れと見なす人事評価の慣習が背景にあるとみる。

 それを示すのが、年次有給休暇(年休)の取得率の低さだ。年休は、フルタイムで6カ月以上働いた従業員に年10~20日与えられる労働者の権利。原則、働き手が好きな時に取れる。取得率は与えられた日数のうち、労働者がどれだけの日数を取得したかを表し、厚生労働省によると2018年は52・4%。大手旅行サイトの国際比較調査では、主な19カ国中、3年連続で最下位だった。

 同機構が11年、全国の正社員約2000人に年休を取り残す理由を聞くと、「病気や急な用事のために残しておく必要があるから」が最多。しかし、浜口さんは「年休は本来、ある程度まとめて取り、心身の休養を図るもの」と説明する。

 そうした考え方が浸透する欧州では、夏に2~4週間の年休を取り、家族でバカンスを楽しむのが定番という。年度初めに会社側が希望を聞き、1人1人の取得時期を調整する計画年休制度が定着しており、ドイツやフランス、スペインは取得率100%。体調不良などで休む際は、病気休暇を取るか、欠勤するのが当たり前という。浜口さんは、半日、時間単位でも取得できる日本の年休制度を問題視する。

 働き方改革の一環として昨年4月から、年10日以上の年休が与えられている働き手には、雇用主が最低5日は取らせることが義務化された。「休みが充実すれば、仕事の効率も上がる」と年休の取得促進に励む企業も多い。日本生産性本部によると、1人の労働者が一定の時間でどれだけのモノやサービスを生み出すかを示す労働生産性で、日本はデータが取得可能な1970年以降、先進七カ国(G7)で最下位が続く。

 感染を広げないため、何らかの体調不良を感じたら率先して休むことは、周囲のため、また会社のためでもある。ただ、年休とは別に病気休暇を設けている企業は少ない。今回のように飲食業界などを中心に、国や自治体の要請で休業した場合も、働く人が安心して休める補償が必要だろう。

 在宅勤務の導入増加など新型コロナは、働き方にさまざまな変革を迫っている。休みに対する意識もその一つだ。どう働き、どう休むのか、どんな制度が使えるのか、休業を余儀なくされた場合はどうか-などを普段から考え、知っておくことが求められる。

 (平井一敏)

政府の緊急事態宣言が全国に拡大された翌日、マスク姿で出勤する人たち=17日、名古屋市中村区で
政府の緊急事態宣言が全国に拡大された翌日、マスク姿で出勤する人たち=17日、名古屋市中村区で