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【暮らし】在宅勤務、効率よく 職場と同じ環境を意識

2020/04/30

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、企業で導入が進む在宅勤務。緊急事態宣言の対象地域が全都道府県に拡大したことで、今後ますます広がりそうだ。ただ、上司の目がないとついサボったり、職場内の意思疎通の機会が減ったりと、勝手の違いに戸惑う人も多い。新型コロナの終息まで長期化が予想される中、在宅でも効率よく仕事ができるこつを身に付けたい。

 東京都内の出版社勤務の女性(33)が、会社の指示で在宅勤務に切り替えたのは2月末。当初は週1~2回と緩やかで「通勤ラッシュから解放されるし、一人暮らしだから集中できる」と喜んでいた。

 ただ、感染が広がり、今月からは原則出社禁止に。仕事先との打ち合わせは基本、電話かメール。「顔を合わせれば表情や声色で伝わることも、メールだといちいち文字にしないと。込み入った話はしづらい」とストレスを感じている。一方、自宅ならではの気の緩みも。上司には、始業と休憩、終業時にメールを送るが、それ以外は何をしてもばれない。昼寝をしてしまうこともあるという。

 民間調査機関「パーソル総合研究所」(東京)が全国2万5千人に調査したところ、7都府県に緊急事態宣言が出された7日以降、テレワークを実施したと答えた人の割合は27・9%。このうち68・7%がテレワークは初めてだった。

 在宅勤務で意識したいのは「できるだけ職場と同じ環境をつくること」。10年以上にわたり企業へのテレワーク導入を支援してきたコンサルタント会社「テレワークマネジメント」(北海道)代表の田沢由利さん(57)は助言する。まずは身だしなみだ。部屋着のままはサボりのもと。面倒でもスーツなど仕事着に着替えると気が引き締まる。

 パソコン作業ができる適当な高さの机がない場合は、あるものを使って工夫。テーブルが低ければ本を重ねて高さを出し、その上にパソコンを置くなど、仕事がしやすい姿勢を保てるよう考えるといい。持ち帰った書類をしまう棚がないときは、スーツケースなどに入れると散らばらない。

 幼い子が家にいる人も多い。自身も3人の世話をしながら在宅勤務をした経験がある田沢さんは「小さい子どもの面倒と仕事を同時並行でこなすのは難しい」と指摘。昼寝の時間に仕事に打ち込んだり、他の人と都合を合わせる必要がある場合はビデオを見せたりと時間を区切ると集中しやすい。登園自粛が呼び掛けられるなど緊急時の今は、平時の在宅勤務より負担が大きい。「上司は子どもの世話で仕事ができない時間があると理解し、仕事量を調整することも大事」と話す。

 サボりがちになる人がいる一方、働き過ぎも要注意だ。時間の制限も気に掛けてくれる周囲の目もないため、だらだらと仕事をしてしまう。だからこそ「電話やメールやチャットなど普段以上にコミュニケーションはまめに」と強調する。

 始業時にその日の予定や目標、決まった時間に進捗(しんちょく)状況を上司に連絡するよう定めている企業は多い。ただ、予定が終わらないからと残業が多くなってはいけない。定時になったらチャットなどで上司から全員に一声掛け、一斉に仕事を切り上げることが大切。その際、残業が必要かどうかを含め個別に会話をすれば、自宅での仕事の進め方を見直すきっかけになる。オンラインのテレビ会議ツールを使って、朝礼や夕礼を行うのも手だ。在宅勤務は休みではない。「勤務時間内なら、電話も気にせずかけて大丈夫」と言う。

 「通信環境を整えるなど家でも職場と同じように働ける仕組みができれば、生産性も下がらない。多様な働き方が可能になり、人材確保につながる」と田沢さん。「この機会に慣れておくとコロナの後にきっと生きる」と話している。

 (添田隆典)

新聞社の取材も変わりつつある。画面越しに在宅勤務の3人に話を聞く記者=中日新聞社で
新聞社の取材も変わりつつある。画面越しに在宅勤務の3人に話を聞く記者=中日新聞社で