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【暮らし】新型コロナで休業、解雇…相談窓口活用を

2020/04/20

 新型コロナウイルスの感染拡大で、宿泊業や飲食業などを中心に休業が広がっている。働き手の中には、雇用主の都合で休みを取らされたり解雇されたりと、苦しい状況に置かれている人も少なくないだろう。困った場合はどうしたらいいか。官民ともに相談窓口を設けるなど支援に乗り出している。

 「明日から休んで」。石川県内に住む四十代女性は三月末、突然、勤務先の旅館から言い渡された。女性は非正規。客が目に見えて減っていた。時給で支払われていた給料の六割は休業中も払うとは言われたが、いつまで休めばいいかも分からない。不安が募り、労働基準監督署に相談した。

 労働基準法は、事業者の都合で労働者を休ませた場合、事業者は休業手当として直近三カ月間の平均賃金の六割以上を払うと定めている。女性は説明を聞き、会社側の言ったことには法的な裏付けがあると分かったという。ただそれでいつまで生活できるのか。次の仕事を探すか迷っている。

 新型コロナ関連の相談増加に備え、厚生労働省は二月十四日、労基署を管轄する各労働局に「特別労働相談窓口」を置くよう指示。愛知労働局が名古屋北労働基準監督署など三カ所に設けた窓口にあった相談は二月の五十七件に対し、三月は九百七十八件に急増。四月は八日現在で既に五百七十一件と増え続けている。

 相談者は雇用主が六割を占め、休業手当の費用の一部を国が負担する雇用調整助成金に関する企業からの質問が多い。今のところ、働き手の相談は四割で、女性のように「会社から休むよう言われた」、反対に「子どもの休校に合わせて休みたいのに休ませてもらえない」など休業やその間の補償に絡む内容が目立つ。休業手当が支払われない場合などは、企業に助言、指導するよう、労働者が労働局に求めることもできる。

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 国の機関だけでなく、働き手の相談に幅広く応じる労働組合もある。一人からでも入れる名古屋ふれあいユニオンはその一つだ。組合員約四百五十人のうち九割以上が、より弱い立場にある非正規労働者。外国人も四割を占める。従来、ユニオンに寄せられる相談は、パワハラや長時間労働が中心だ。しかし、三月末ごろから「減産で四月末で雇い止めになった」「派遣先の仕事がなくなり、別の派遣先を紹介されたが時給が大幅に減る」「契約期間を短くされた」など新型コロナが原因と思われる相談が増え始めた。組合員になれば、会社との団体交渉などの支援を受けられる。

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 労働関連法の解釈や訴訟に関する相談なら、弁護士の電話相談が心強い。

 東海地方の弁護士約百人が加わる東海労働弁護団(名古屋市北区)は毎週火曜午後五~七時、電話相談に応じている。同弁護団を含む各地の弁護団が五日、全国一斉で行った電話相談には、飲食店アルバイトの雇い止めや、休業の間の賃金不払い、内定取り消しなど四百十二件の相談が寄せられた。うち五十六件が、東海労働弁護団に寄せられた相談だ。

 同弁護団事務局長の白川秀之弁護士は「過去に例のない多さ。相談を見ると、非正規をはじめ、立場の弱い人にしわ寄せがいっている印象」と指摘。その上で「『仕事がないから』などと求められるままに退職届などにサインしてしまうと、その後で争うのは大変。おかしいと思ったら、どこであれ早めに相談してほしい」と呼びかける。(佐橋大)

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 各労働局の連絡先は「厚生労働省」「特別労働相談窓口」で検索。名古屋ふれあいユニオンが加盟する全国組織「コミュニティ・ユニオン全国ネットワーク」(東京)のホームページ(HP)には各地の加盟労組一覧が載っている。日本労働弁護団(東京)のHPには、各地の労働弁護団や法律事務所の一覧を掲載。

新型コロナウイルス感染症の影響による労働相談などを受け付けている窓口=名古屋市東区の名古屋北労働基準監督署で
新型コロナウイルス感染症の影響による労働相談などを受け付けている窓口=名古屋市東区の名古屋北労働基準監督署で