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やってみました 記者たちの職業体験ルポ 養蜂

2009/02/05

健康状態もチェック

 菜の花まつり真っ盛りの田原市で、養蜂(ようほう)業に挑戦した。ガイドは、自宅でミツバチを飼育しながら養蜂の研究を続ける元理科教諭の白井庸さん(62)=同市豊島町。万が一でも刺されたら一大事。立春も近い晴天の暖かな昼下がりに防護用の衣服を頭からかぶり、分厚い革手袋という“重武装”でミツバチに近づいた。
 長方形のラングストロス氏式巣箱(縦五十三センチ、横四十四センチ、高さ三十二センチ)内にミツ貯蔵庫や卵・幼虫の家になる巣脾(すひ)枠十枚が納められている。巣箱を支配するのは一匹の女王バチ。その下には二万-三万匹のミツバチが群がる。冬のミツバチは巣箱にこもり、ためたミツをなめながら暮らしているが、白井さんによると、気温が七度を超すと巣箱から飛び立つという。

 箱のふたをそっと開けてみた。「ブーン!ブーン!」。いきなりミツバチが元気に空中へ次々と舞い上がる。手や腕にまとわりつく無数のハチに神経を使いながら、外側の巣脾枠を一枚そっと抜き出した。

 この時期、ハチはまばらで、全体が蜜蓋(みつふた)で覆われ濃いミツの詰まる六角柱の巣房が並ぶ。中心部の巣脾枠にはミツバチが密集しているが、現在、産卵はないようだ。ミツの減り具合や害虫の有無を調べるほか、ハチの健康状態も観察。チェック項目は多い。

 養蜂業は、特定の花を追い全国を回る「移動養蜂」と一カ所で異種花を待つ「定置養蜂」の二種類。花によってミツは味もにおいも色も異なる。定置養蜂を続ける白井さんは「ミツを取るための花を育てるのも課題」という。「今年はクリの木を植える。ハチを飼うようになり、野山の草木を見る目が変わった」。養蜂の奥の深さを感じた。(岡田健三)

    ◇

 【メモ】養蜂業をするには「養ほう振興法」で県への届けが必要。田原市の業者は5人。収入は飼育数などによっても違うが、同市加治町の鈴木政夫さん(64)方では60箱で年約3トンを採取。売り上げは約1000万円になる。花に消毒剤などは使えないので、白井さんは「環境を守る気持ちが強くないと、この仕事は続けられない」と話している。

巣箱にこもるミツバチ群の手入れ=田原市豊島町で
巣箱にこもるミツバチ群の手入れ=田原市豊島町で