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【愛知】取りにくい?「男性の育休」 18年、県内企業は全国下回る

2020/02/08

 小泉進次郎環境相が計2週間の育児休業の取得を表明し、「男性の育休」が注目を集めている。しかし、県内企業を対象にした県の調査によると、2018年の男性の育休取得率は4.6%。全国の6.16%と比べても低い。どうすれば男性も積極的に育児に参加できるのか。県内の先進企業と、民間よりも大幅に取得率を伸ばしている県に、男性の育休取得を促す仕組みを聞いた。

◆上司と面談し積極推進 県知事部局は19%

 県内企業の育休取得率が低迷する一方、県は男性の育休取得を積極的に促し、教員や警察官を除く知事部局で18年度の男性の育休取得率が前年度比6・6ポイント増の19・0%となった。

 県は13年から、子どもが生まれる男性職員は必ず上司との面談「イクメンサポート面談」を受けるようにしている。産前産後のスケジュール表や子育て支援制度の利用計画表を使いながら、上司が育休の取得を促している。

 2児の父である産業科学技術課の安藤隆祐さん(33)も育休を取った1人。長男誕生時の18年春と長女誕生時の昨年夏に、それぞれ1カ月間休んだ。

 育休中は、日中の授乳やおむつ替えを担当。「産後すぐ母親は体力が戻らない中、2、3時間おきに授乳しないといけない。大変な時期を少しでも助けることができた」と振り返る。

 仕事復帰後も子どもの風呂の時間に間に合うよう早めの帰宅を心掛ける。「夜早く帰る分、朝早く出勤するなど、仕事の見直しにもつながった。子どもも夜寝る時『パパと一緒がいい』と言ってくれるようになりました」と笑顔で話す。

 県は男性職員の育休体験を採用パンフレットに掲載し、就活生にPR。人事課の担当者は「男性の育休取得の推進は、働き方に敏感な若い世代へのアピールポイントになる」と語る。

◆先進のアイシンAW 両立配慮の「上司」育成

 「1人1人のワークライフバランスを考えてきた結果として、男性も育休を取りやすくなったのでは」

 自動変速機の世界最大手アイシン・エィ・ダブリュ(安城市)の人事部人事企画グループマネジャー、林芳高さん(35)はこう語る。

 同社は18年、部下の家庭生活と仕事の両立に配慮する管理職「イクボス」を育成するため、グループマネジャー500人を対象に「イクボス塾」を始めた。参加者はグループ研修を通じて、育児や介護など部下が抱える悩みごとを共有。1人1人に向き合うマネジメントを学んでいる。

 年間最低14日間の有給休暇取得や残業の見直しも働き方改革として進め、育休を取得した男性は16年度10人、17年度14人、18年度20人と着実に伸びてきた。同社の従業員は約2万6500人。林さんは「男性の育休がもっと増える余地はある」と話す。

 ただ、先進的な取り組みは一部の企業にとどまる。男性の育児を支援するNPO法人ファザーリング・ジャパンの東海支部長、榊原輝重さん(51)は県内のメーカーで講演をした時に「男性の育休には賛成だが、うちの会社では休めない」という声を聞いた。「稼ぐだけが父親の仕事ではないし、子育てはたくさんの気付きがある。『父親を楽しもう』と、もっと伝えていきたい」と力を込める。

 (森若奈)

「イクメンサポート面談」で使用するスケジュール表を手に、育休体験を語る安藤さん=県庁で
「イクメンサポート面談」で使用するスケジュール表を手に、育休体験を語る安藤さん=県庁で