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【社会】雇用促進住宅を不正転用 愛知の派遣会社2社

2009/02/04

 愛知県内の派遣会社2社が、県内の雇用促進住宅2カ所を事実上の「社員寮」として不正転用していたことが分かった。派遣会社が社員に雇用促進住宅を紹介、入居に際して連帯保証人となり、社員が退社して住宅を出た後も解約させず、勝手に別の派遣社員を“替え玉”として住まわせる手口。派遣会社が社員寮確保の手間やコスト削減を狙ったとみられるが、最終的に入居した派遣社員が退去時に不利益を被るケースが起きている。雇用促進住宅の派遣会社による社員寮化は水面下で広がっていた可能性もある。

 不正転用が明らかになったのは、大府市と豊田市にある雇用促進住宅。入居には「住宅の確保が必要であると公共職業安定所長が認めた場合」などの要件に該当し「月給が家賃の3倍以上ある」などの資格を満たす必要があるが、派遣会社は新たな敷金も払わず、こうした手続きを経ないまま、別人を入居させていた。

 雇用促進住宅の管理運営を行う財団法人雇用振興協会本所(東京都)は「このような事例は聞いたことがない。ほかの入居者や入居希望者に対して不公平となり、あってはならないこと」と話している。雇用保険法上は不正入居に対する罰則は定められていない。

 同協会名古屋支所によると、大府市の雇用促進住宅「長草宿舎」の8戸には、最近まで東海市の派遣会社の社員8人が単身で入居し、いずれも会社が連帯保証人だった。うち3戸は当初入居契約をした社員とは別人が入っていたことが今年1月に発覚した。

 3人のうち会社を解雇され、昨年の大みそかに退去を迫られた男性(42)は、社長が当初の入居契約者の名前で退去届を偽造し、勝手に協会へ提出していた。男性は退去時の住居喪失証明書が得られず、求職活動にも支障が出ていた。

 この部屋には2002年4月から6人が入退去を繰り返していたとみられる。

 これらの部屋について会社は社員に「社員寮」と説明。家賃や共益費を給与天引きし協会に振り込んでいた。派遣会社社長(54)は中日新聞の取材に「別人の入居は協会側から黙認をもらったと思っていたが、甘かったと思う」と話している。

 豊田市の「秋葉宿舎」では03年ごろに発覚。35戸に東海市とは別の派遣会社1社の社員が入居し、少なくとも10戸に別人が住んでいた。いずれも会社が連帯保証人で、家賃は会社が天引きして協会に振り替えていた。現在でも6戸でこの会社の派遣社員が入居し、うち2戸は別人が暮らしている。同社は雇用振興協会名古屋支所に「寮的な感覚だった」と話している。

 雇用振興協会の現状の管理体制では別人入居を防ぐのは困難で「同じようなことをやっていた派遣会社はあった」(愛知県内の派遣会社社長)との指摘もある。

 これらの事例があったにもかかわらず、協会はこれまで具体的な再発防止策を実施していなかった。同協会本所は「全国10万戸の入居者に替え玉入居をしないよう求めるチラシを配布するほか、今後の入居者は天引き支払いを原則禁止する」と話している。

 【雇用促進住宅】  炭鉱離職者などに向け1961(昭和36)年から設置。現在、10万戸に30万人が入居し、家賃は平均3万円。公共職業安定所長が「住宅の確保が必要」と認めた勤労者も入居対象で、派遣社員はこれに当たる。独立行政法人雇用・能力開発機構が設置運営するが、業務は財団法人雇用振興協会に委託。役割を終えたとの指摘が強まり、2021年までの全戸譲渡・廃止が決まっている。

(中日新聞)