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【暮らし】置き菓子やコーヒーの職場向けサービス浸透 社員の会話も促す

2020/01/20

 仕事中、小腹がすいたときや気分転換したいとき、つい欲しくなるのがコーヒーや甘いお菓子だ。かつては仕事中の飲食を「だらしない」などとして禁じる例も多かったが、最近は「能率アップにつながる」と、積極的に認める企業が増えている。加えて「社内連絡もメールやSNSが中心」という傾向が強まったことを背景に、社員同士の会話を促すのにも役立つと注目を集める。

 ビスケットやラスクに、ストレス軽減に効くアミノ酸GABAを含むチョコレートも。ゲームアプリを開発する「サイゲームス」(東京都渋谷区)の休憩室に設けられた棚には約20種類のお菓子がぎっしり。時折、社員が訪れては好きなお菓子を手に取って仕事場に戻る。徳茂敏一さん(32)は「外に買いに出る手間が省ける」と笑う。

 オフィスがあるのは、地上24階建てビルの15階。付近にはコンビニもあるが、エレベーターを使って往復すると10分近くかかり、買いに行けば、その都度仕事がストップする。

 昨年4月施行の働き方改革関連法は、残業時間の上限を月45時間と明記。同社はそれに合わせ、限度時間を超えると仕事場への入退室を制限するルールを課した。お菓子の棚を管理する総務の永井智博さん(32)は「これまで以上にめりはりが大事。糖分を補給して一息つきたいとき、すぐ手に入るのは便利」と話す。置き菓子は働き方改革に一役買っているわけだ。

 同社は2014年から、大手菓子メーカー「江崎グリコ」による置き菓子のサービス「オフィスグリコ」を利用している。専用の棚を設けると、利用状況に応じて、お菓子を補充したり、社員の要望などを基に新しい商品を入れてくれたりする仕組み。利用者は1つ当たり100~200円で品物を購入する。棚の設置や商品の補充は無料。グリコは売れた分の代金を受け取る。

 美容系サイトを運営する「アイスタイル」(東京都港区)が使っているのは、大手飲食品メーカー「ネスレ日本」のサービス「ネスカフェアンバサダー」だ。コーヒーマシンのレンタルは無料。ネスレから購入したコーヒー粉を使ってコーヒーを入れる。同社では1杯50円を徴収。1カ月で約1000杯が飲まれている。

 もともとは13年、オフィスにコーヒーの自動販売機がないことから導入したが、最近は社内コミュニケーションを促す意味でも欠かせない。同社では3年前から打ち合わせや連絡に社内チャットを取り入れた。便利な半面、直接顔を合わせて話す機会は減った。しかし、マシンの周りには人が集まる。「ほっと一息つく時間だから会話が弾みやすい。チャットで名前しか知らなかった人と出会って話すこともある」と社員の寺田穂(みのり)さん(24)。こうしたつながりが部署を超えた仕事をやりやすくしている。

 オフィスグリコのサービスは02年に始まり、今では約10万カ所の事業所が利用。12年からスタートしたネスカフェアンバサダーの利用は46万カ所に上る。残業規制やSNSの浸透を受け、「作業効率のアップや社内コミュニケーションの円滑化などを目指して使う企業が増えている」と、両社は口をそろえる。

 仕事の能率を上げる効果はどうか。管理栄養士の足立香代子さん(71)は「コーヒーに含まれるカフェインには眠気覚ましの効果、お菓子に含まれる糖分は集中力の維持に効果がある」と説明する。ただ、大事なのは「ほどほど」。国の食品安全委員会は、カフェインの取りすぎは目まいや吐き気を催す恐れがあると指摘する。お菓子も食べ過ぎると、肥満などが心配だ。

 足立さんのお薦めはチョコ。「脂肪が含まれるので満腹感が得られ、血糖値の上昇も穏やか」。コーヒーとチョコで気分を変えたら、さあ、もう一仕事だ。
 (添田隆典)

オフィスグリコの棚からお菓子を選ぶ社員=東京都内のサイゲームスで
オフィスグリコの棚からお菓子を選ぶ社員=東京都内のサイゲームスで
コーヒーマシンの前でコーヒー片手に一息つく社員たち=東京都内のアイスタイルで
コーヒーマシンの前でコーヒー片手に一息つく社員たち=東京都内のアイスタイルで