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【愛知】保育の現場 シルバー活躍 元保育士ら見守り、無資格者も雑用など

2019/11/02

 保育現場の人手不足が深刻化する中、60歳以上のシルバー人材が活躍している。子育てや現役時代の経験を生かしてもらえればと、資格を持っていない人も雇い、片付けなどの補助的業務に就いてもらう施設も。高齢者側は子どもたちの笑顔に元気をもらっており、「ウィンウィン」の関係が成り立っているようだ。(松野穂波)

 9月下旬、昭和区永金町一のたきこ幼児園。非常勤スタッフの伊藤紘子さん(76)=瑞穂区=は、エプロン姿で腰掛け、乳児らを見守っていた。膝の上に座らせ、絵本を読み聞かせることも。「本当にかわいい。『おばあちゃん先生』って呼んでもらえて、生きがいです」と笑う。

 伊藤さんは元保育士。夫が経営していた工場の手伝いなどで長年現場を離れていたが、市シルバー人材センターの紹介を受け、2017年12月から同園で週3回、夕方3時間ほど働いている。偶然にも、学生時代は隣接する滝子幼稚園で教育実習を経験した。「縁を感じる。昔は目の前のことに必死だったけれど、今は気持ちに余裕がある」と言う。

 同園が預かる園児は、分園と合わせて130人。職員40人の半数は非常勤だ。「行政の基準を満たしていても、フルタイムの職員だけでは会議をする余裕もない。十分な保育をしようと思ったら、朝や夕方に助けが必要」と武石協子園長(71)は苦労を明かす。子持ちの女性らは夕方以降の勤務は難しく、学生アルバイトは教育実習期間にそろって抜けてしまう。

 そこで頼ったのが、シルバー人材だった。「短時間でも毎日来てくれ、安全面にも気を配れる。『大人の目』として頼りになる」。センターなどを通じて数年前から雇い始め、現在は3人が保育士を助けるために働いている。保育士資格を持たない人もいるが、見守りや水漏れする蛇口の修理などで力になってくれているという。

 センターによると、市内でも他に3カ所の保育園に会員を派遣している。センター業務部の小林陽次長は「シルバーの仕事の幅が広がっている。短時間の見守りはシルバーの強みが生かせる仕事で、ニーズは今後より増えていくと思う」と期待する。

園児らを優しく見守る伊藤さん=昭和区永金町1のたきこ幼児園で
園児らを優しく見守る伊藤さん=昭和区永金町1のたきこ幼児園で