2019/10/16
聴覚障害者や、外国人も働きやすく
トヨタ自動車グループの内装部品メーカーのトヨタ紡織は、聴覚障害者らが生産現場で働きやすくするため、作業で使う専門用語を表現するオリジナルの手話を考案した。必要な物はまずは自社で作るトヨタ系の文化「自前主義」を応用した取り組みで、日本語が苦手な外国人労働者にも重宝されている。(鈴木龍司)
手話を作ったのは、猿投工場(愛知県豊田市)の自動車シート用カバーを縫製するラインのメンバー。ラインの従業員の7%に当たる5人が聴覚に障害がある。
ミシンを使う工程では、縫い合わせの面がだぶついてしまう「つまみ」や、縫い目が一つ飛ぶ「目飛び」などの専門用語を多用する。だが、これらを表現する手話はなく、50音を指で表す指文字や筆談は「伝達に時間がかかって迷惑が掛かる」と、障害者が遠慮してしまう課題があった。
「手話がないなら作ってしまおう」と休憩時間に職場で相談。例えば「つまみ」は手の甲をつねり、「目飛び」は目を指した後、指を高く上げるしぐさで表すことに決めた。これまで、「工長」や「職長」など工場特有の肩書など約60種類の手話を考案。ブラジル、中国などの外国人を含めたコミュニケーション促進や品質、作業効率の向上に役立っている。
職場では朝礼の口頭説明を文字でテレビ画面に映したり、ドアに人の接近を知らせるランプを設置したりする改善も進めている。
トヨタ紡織は聴覚障害者を中心に150人余の障害者を雇用し、健常者と同じ作業ができる環境整備を強化。ろう学校に社員を派遣して理解を深めたり、学生を工場実習に受け入れたりしている。保護者の面談など、採用後のケアにも力を入れている。
縫製ラインで工長を務める岡本由加里さんは、オリジナル手話の取り組みを「障害者の人に気を使わせたくなかった。コミュニケーションの活発化で、職場全体にメリットがある」と説明。聴覚障害者の山口めぐみさん(22)は「みんなで手話を相談し、心の距離が縮まった。自分が助けてもらったように、将来は周りの人をサポートできる立場になりたい」と意欲を示している。
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