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【暮らし】より良い職場は社則の理解から 周知なき改定は無効も

2019/10/14

 新入社員が社会に出て半年余り。慣れない仕事に大変だろうが、大事なことを伝えたい。それは、入社前後に会社から手渡されているはずの「社則」だ。「就業規則」とも呼ばれる。賃金や労働時間などの働き方について、経営者側と労働者側が交わした約束、いわば労使の「憲法」のようなものだ。元気に働き続けるため、そして幸せな未来を築くため、しっかり読むべし。

 4月に入社したばかりの新入社員を募り、それぞれが勤める会社の社則を読んでもらった。「これまで読んだことは?」と問い掛けたところ、「初めて」という人ばかりだ。

 働く以上、大切なのはまず「お金」だ。「うちの会社は『何が残業なのか』があいまい」。名古屋市中区の商社で働く女性は、こう漏らした。「社則には『全時間外労働に対し、時間外手当をもらえる権利がある』とうたわれている。でも現場では、何が時間外労働で何がそうでないのか、いちいち先輩の指示を仰がなくてはならない」。しかも、その答えが人や働く場所によって異なるという。

 愛知県内の部品製造会社の女性が注目したのは「懲戒」や「解雇」の項目。該当する行為を説明した後に「これらに準ずる行為」、「その都度定める」という付け足しがあった。「こういう書き方だと、解釈の違いで結果が異ならないだろうか」と案じる。

 労働基準法(労基法)によると、常時10人以上の従業員がいる会社は、社則を作り、労働基準監督署に提出しないといけない。また、常に職場の見やすい場所に掲示するなど、内容を全従業員に知ってもらうための周知義務がある。

 社則が規定するのは、働く上での労働条件。必ず定めなければいけない事項としては、始業および終業の時間、休憩時間や休暇、賃金、退職に関することなどが挙げられる。

 法律の定めよりも、従業員が不利になる規定は無効だ。例えば、労基法で与えることが定められている年次有給休暇(年休)について「うちの会社は有給が取れないんですよ」などという対応はあり得ない。

 ただ、限界はある。例えば賃金。「賃金に関する法律は、雇用主が労働者に支払う最低額を保障する最低賃金法ぐらい」と社会保険労務士で働き方改革コンサルタントの谷川由紀さんは言う。「通勤手当や精勤手当などの諸手当を設けなくても違法ではないのです」

 退職金も社則に定める義務はないというから驚きだ。実際、中小企業を中心に、退職金の規定のない会社は少なくない。谷川さんは「円満退職だと何ももらえないが、解雇なら30日分の賃金が出るから解雇されたことにしたい」という相談について聞いたこともあるそうだ。

 労使の憲法ともいえる社則は、いったん定めたら変えられないのか。波風の激しい経済情勢のこと。法の範囲内であれば、改定は認められている。改定するには、労働組合か、「従業員の過半数を代表する者」の意見を聞かなければならない。しかし、基本的に同意を得る必要はない。

 働き手にとって大事なのは、社側の動向に気を配ることだ。「周知」が不十分であった場合は、改定が無効となる可能性が高い。労働者の不利益となるような一方的な改定もできない。だからこそ、社則をしっかり読み、現在の労働条件を理解しておこう。

 (三浦耕喜)

経営側と労働者側が約束した憲法ともいえる社則
経営側と労働者側が約束した憲法ともいえる社則