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【暮らし】職場にもっとアートを

2019/09/23

 オフィスにアートを取り入れ、社員が仕事の合間に手を伸ばす環境を整える企業が増えている。壁に自由に絵を描いたり、仮想現実(VR)で映像作品を体験したりすることによって得た刺激や人脈がビジネスチャンスにつながるとの期待がある。加えて、色彩効果を意識して壁紙を選ぶなど、働き方に与える効果も注目されている。

◆VR 新たな発想に期待

 掛け軸を飛び出し、勢いよく舞い上がる竜。ぴんと張ったひげや鋭い爪が立体的に表現され、ヘッドセットで見る人は思わず手を伸ばす。

 ソニー・デジタルエンタテインメント・サービス(東京)は、VR映像の体験設備を会議室に備えている。顧客企業は予約すれば、芸術家が制作した多様な映像作品を体験できる。

 360度見渡して気になる所に近づき、描かれた生き物や植物の質感を確かめられるのがVRアートの強みだ。ハードルが高いと感じる人に体験してもらい、ビジネスにつながればと期待する。

 顧客への説明に備えて事前におさらいするなど、社員は自由に設備を利用できる。担当者は「使いこなすうちに新たな発想が生まれる効果を期待しています」と話す。

◆キャンバス 交流のきっかけに

 起業家の支援を手掛けるガイアックス(東京)。登録すれば社員でなくても利用できる共有スペースがあり、人でにぎわう。多様な人が集まって交流を深め、新たなビジネスを生み出す狙いだ。

 そこにある縦2・3メートル、横七メートルの壁は、社員が自由に絵を描ける“キャンバス”だ。額縁に当たる枠が百十二個あり、その中に好きな絵を描く。黒地に白い文字で「SHARE(共有)」と書いた女性は「来た人に自分の特技を知ってもらい、交流が始まるきっかけになれば」と話す。

 人脈を広げるほか、社員が「何を描こうか」と考えるうちに新たなアイデアや仕事への姿勢を見つめ直す効果が期待できる。担当者は「この会社を訪れる人に私たちの姿勢を知ってもらうアート作品になる」と話す。

◆土器 感性磨く

 オフィスに縄文土器を置く化粧品会社もある。ディセンシア(東京)の山下慶子社長の机の横には、縄文土器や美術、歴史の本が並ぶ。

 山下社長は、博物館で縄文土器を見て「手作りの跡が分かり感動した」。敏感な肌を守る商品を届けるだけに、利用者へのメッセージや商品企画には繊細な感覚が求められる。「社員が感性を磨く手助けに」と棚に私物を置き始めた。直接手に取る社員もいるなど、刺激を与えている。