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【社会】「移民」元年/バイト留学生 外食業 「特定技能」に活路

2019/06/23

人手確保へ受験費負担

 居酒屋やレストランといった外食産業が、新設された在留資格「特定技能」を活用し、人手不足の解消につなげようと躍起になっている。資格試験の受験費を肩代わりし、留学生のアルバイトに取得を促す企業も出始めた。ただ、試験には全国から申し込みが殺到しており、受験するだけでも大変な状況が当分続きそうだ。(西山輝一)

 外食産業の現場は多くの留学生のアルバイトが支えているが、入管難民法で週28時間までしか働けない。だが、特定技能の資格を得れば最長で5年間、正社員と同様の労働が可能になる。

 居酒屋「ニパチ」や「や台ずし」などを展開するヨシックス(名古屋市)は、自社店舗で働く留学生のアルバイトに対し、受験料(7000円)や、東京など居住地から離れた会場で受験する場合の交通費の肩代わりを打ち出した。製造業が強い中部地方は人材獲得競争が激しいといい、担当者は「少しでも特定技能の人を増やしたい」と明かす。

 社の業績にも人手不足の影響が生じている。働き方改革の一環として4月から、年中無休だった名古屋市内などの店舗で週休1日制を導入。既存店に限れば、2019年度の売上高は前年度比6%減を予想する。新規出店による規模拡大で、何とか売上高や利益は過去最高を更新できる見通しだが、頼みの新規出店にも人手は欠かせない。

 肩代わりは、6月24~28日に名古屋や東京など全国七都市で実施される第2回試験を受ける13人から始める。交通費支援の対象者はなかった。同社の店舗全体ではアルバイトの留学生が約50人おり、吉岡昌成会長は「順次、希望者に受験してもらい、雇用確保に努めたい」と語る。

 業界での特定技能への注目度は高く、3月下旬にあった第1回試験の募集では受け付けを開始した当日のうちに定員が埋まった。定員を増やした第2回の募集でも申し込みが集中。受け付けのホームページがアクセスしにくくなる状態が数時間にわたって続いた。

 第3回試験は秋ごろに実施される見通しだが、大都市部の会場では当面こうした状態が続くとみられる。ヨシックスの担当者は「小まめに試験の情報をホームページで確認し、希望者の受験機会を確保したい」と話している。

    ◇

◆雇用事業所数14年の1.58倍

 厚生労働省によると、2018年10月末現在、外国人を雇用する事業所は全国に約21万6000カ所あり、4年前の1.58倍に増えた。業種別で4年間の増加比率をみると、「建設業」が2.89倍でトップ。「医療・福祉」1.76倍、「宿泊業・飲食サービス業」1.64倍と続いた。外食産業でも、外国人労働者への依存が進んだことがうかがえる。

 4月に東京と大阪で実施された特定技能の外食分野の第1回試験では、計460人が受験。75.4%にあたる347人が合格した。第2回試験の定員は計2032人。資格取得には別に日本語能力試験に合格する必要がある。

【特定技能】
 4月1日施行の改正入管難民法で創設された外国人の新たな在留資格。人手不足が深刻な介護、建設、農業、外食など14業種が対象。政府は5年間で最大34万人余りの受け入れを見込み、うち外食では5万3000人と想定している。「特定技能1号」の取得は一定の技能と生活に必要な日本語能力が求められる。在留期限は通算5年で家族帯同を認めない。熟練技能が求められる「2号」は在留期間の更新や家族帯同が可能。

居酒屋「ニパチ」で働くアルバイトの留学生=名古屋・栄で
居酒屋「ニパチ」で働くアルバイトの留学生=名古屋・栄で