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【暮らし】発達障害の感覚、VRで疑似体験 職場環境づくりに生かす

2019/06/03

 VR(仮想現実)で発達障害の人特有の感じ方を疑似体験し、働きやすい職場づくりに生かしてもらう取り組みが進んでいる。VRを制作したのは、認知症体験ができるプログラムなども作る千葉県浦安市の会社「シルバーウッド」で、6月からサービスの提供を始める。発達障害の特性の一つが、光や音に敏感すぎること。障害のある人に、周囲はどう見え、どう聞こえているかをリアルに再現している。

 VRは、企業や役所の人事担当者向けだ。障害者の就労支援事業などに取り組む「LITALICO」(東京都目黒区)に協力を依頼。同社が長年接してきた発達障害の人の声を参考に制作した。社内の研修プログラムで使ってもらうことを想定している。

 サービス提供を前に4月に東京都内であった体験会には、省庁や大手企業の約五十人が参加。専用ゴーグルを着けて、発達障害の中でも自閉スペクトラム症(ASD)の人に多いとされる聴覚過敏や視覚過敏を体験した。

 聴覚過敏の映像は、周りに人がいるざわついた空間での面接の場面。面接者の声に集中しようとするが、周囲の人の声が邪魔をして全く理解できない。視覚過敏は車の後部座席に座っている設定。真っ暗なトンネルを出た瞬間には、風景が真っ白になって車と歩行者さえ判別しにくい状態に。目の前に砂嵐のような光の粒が突然現れることも。

 普段、職場で発達障害の人と接しているだけでは分からないだけに、皆、驚いた様子。「障害の状態を、自分のこととして体験することが重要」とシルバーウッド社長の下河原忠道さん(47)。参加者の一人、インテリア小売り大手「ニトリ」労働組合副書記長小池美紗登さん(39)は「組合には、お客さんらへの対応で悩む声が寄せられている。本人の感じ方が分かったので、必要に応じて会社への改善を求めたい」と話した。

 「LITALICO」の社員で、発達障害の当事者でもある吉野公篤さん(37)は「自分たちのストレスや疲れやすさを周囲に知ってもらうことが大事」と説明する。四年前に発達障害と診断された吉野さんは、視覚や聴覚、味覚など五感に過敏症状がある。

 自らも協力したVRについては「私たちの日頃の状態をうまく表している」と評価する。その上で、光に過敏な人は職場でサングラスを使えるようにすることを提案。日光が差し込む窓際を避ける席替えや照明を暖色系に取りかえることなども落ち着いて仕事をするには有効という。一方、音に過敏に反応してしまう場合は「耳当てを着けることが役立つ」。集中できる静かな場所を設けるのも効果的だ。「発達障害の人を特別扱いするのでなく、全ての人が安心して働ける職場づくりを意識してほしい」

◆国もサポーター養成講座

 厚生労働省が4月に発表した障害者雇用状況報告によると、昨年の発達障害の人を含む精神障害者の雇用者数は約6万7000人。前年比で約35%増えた。診断を受けていない人は、さらに多いとみられる。

 発達障害の人は、こだわりが強かったり人との意思疎通が苦手だったりで就労が難しい人が多い。そこで、同省は一昨年9月から「精神・発達障害者しごとサポーター」の養成講座を開催。発達障害の人の特性に応じた配慮や接し方などを教えている。これまで全国で3000回以上開き、10万人近くが受講したという。

 (五十住和樹)

専用ゴーグルを着け、VR映像を見る参加者=東京都目黒区で
専用ゴーグルを着け、VR映像を見る参加者=東京都目黒区で