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【暮らし】<悩む前に 介護離職を防ぐ>(下)仕事を探す人たち

2019/01/29

 介護を抱える社員が増え、各種対策を打ち出している企業。しかし、それで働き続けられるようになるのは、あくまでその企業に雇われている会社員だ。しかし、世の中、会社員ばかりではない。親などを介護しながら仕事を探す人たちの中には、時間がなく意欲もすり減らし、困窮している人も少なくない。

 岐阜県中濃地方にある借家。午前9時すぎ、迎えに来たバンタイプの車に父親(77)を車いすごと乗せてデイサービスへ見送ると、息子の男性(53)は自転車でスーパーへ向かった。父親は要介護4。息子との2人暮らし。アルツハイマー型認知症で、いっときも目が離せない。

 自分の時間を持てるのは、父親がデイに行く週3回の午後4時まで。その間も休息できるわけではない。食料やおむつなどの買い物や各種手続き、自分の入浴なども済ます。やがて父親が戻り、再び「目の離せない」時間が始まる。

 男性は言う。「『デイの間とか、帰る時間を延長してもらえば働けるじゃない?』と言われるのが一番悲しい。やったことのない人には分からない」。確かに、遅くまで預かってくれるデイなどもあるが、利用料はその分かかる。職がない身では、週3回の日中のみが精いっぱいだ。

 自営業だった父親は国民年金で月の収入は5、6万円ほど。デイや時々使うショートステイへの支払い、おむつなどの介護用品代で消える。日々の暮らしは生活保護が頼りだ。生活保護を受けるため車は手放し、ますます時間に追われるようになった。職探しの時間に充てたいのに、黙々と歩く時間だけが増えていく。

 男性は合成樹脂メーカーで働いていた。行政手続きに詳しいため、新事業を立ち上げようと仲間に誘われて退職。だが、難航する間に、父親の症状が顕著に。介護をしながら、職探しの時間をひねり出した。

 だが、50代の再就職は、ただでさえ厳しいのに、「『働けるのはデイのある週3回、2時間くらい。年寄りの急な発熱、腹痛、病院通いで突然欠勤・遅刻することもしばしば』という人を雇う会社があるでしょうか」と男性は言う。

 面接まで進んだ社もあったが、男性の話を聞いて不採用となった。2時間歩いて県の労働局に相談したが、有益な情報はなかった。

 会社に雇われるのが困難な以上、男性は自営の道を考え始めている。「自分の経験を役立たせ、介護で疲れ切った人がほっとできる『ケアラーズカフェ』を開こうと勉強中です。暮らしも成り立たせるために」

 いったん会社の保護から外れると、はい上がるのは難しい。それでも生きていかねばならない。

 京都大大学院経済学研究科の久本憲夫教授(63)は「親や配偶者の介護がなければ生活できるだけの収入のある仕事ができる人でも、仕事を辞めてしまうと社会には生活保護の制度しかない。自活する意欲がある人たちを就業から遠ざけてしまうのは、社会にとっても望ましくない」と指摘。「こうした人たちが生活できるだけの収入を得られる仕組みを充実することが重要だ」と強調する。

 多様な働き方を認めることも「働き方改革」の一環。ならば、仕事と介護の両立も、フリーや自営など、会社員以外の働き方にも目を向ける必要がある。

 (三浦耕喜)

スーパーで買い物を終えた男性は、次におむつを買いにドラッグストアへ。父親が戻るまでにやることはいっぱいだ=岐阜県内で
スーパーで買い物を終えた男性は、次におむつを買いにドラッグストアへ。父親が戻るまでにやることはいっぱいだ=岐阜県内で