2019/01/14
この正月に実家に帰省した40~50代の中には、親の老いに漠然とした不安を抱いた人も少なくないだろう。実際、子世代の年間10万人が介護を理由に職を辞している。現状を放置すれば、本人や家族はもちろん、中軸の人材を失う企業にとっても痛手だ。2度の介護離職を経験し、その経験を基に啓発・執筆活動をしている工藤広伸さん(46)は、介護離職を防ぐ「三つの知る」の必要性を説く。
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「介護は自分や家族の人生を一変させる大きな出来事。なのに、多くの人はまだ先のことだと目をそらし、備えようともしない」。工藤さんが強調する第一の「知る」は、真正面から「親の老いを知る」ことだ。
「親が忘れっぽくなったり、同じ話を繰り返したりするのは『軽度認知障害』の可能性が高い。この段階で病気を見つければ、元に戻ったり、発症時期を遅らせたりできる」と工藤さん。「だが『年を取れば誰でもそう』と、結局は診察を受けるなどの行動は何もしない」
そういう工藤さんにも苦い経験がある。「今思えば、私の母にも手を打てる軽度の時期があった。その大事な時期を、私は年相応の物忘れと決めつけ、何もしないまま母は認知症になってしまった」
都合の悪いことに目をつぶっていては何も行動できない。だから「親の老いを知る」はすべての出発点だ。
その上で、具体的にどう動くか。工藤さんは第二の「知る」として、「介護ケアの仕組みを知る」ことを挙げる。「ここは介護と仕事を両立させる上で、もっとも肝要なところ」と工藤さん。特に「まずは社内規則を読もう」と勧める。社によって異なるが、「介護休業規定」などという名称で定められている。「育児・介護休業法」という法律で、設けるよう会社に義務付けられている。
規定をきちんと知っておくのはもちろんだが、「男性に多いのですが、プライドが邪魔をして事情を語らずに会社を辞めてしまう人も少なくない」と工藤さんは指摘する。「語っても、『無理をさせられない』という会社の配慮で責任ある仕事から遠ざけられ、キャリアがそこで止まってしまうのではないかという不安がある」。どれほど制度を整えたとしても、親の介護を抱える人が冷遇されては、かえって制度の利用を遠ざけるジレンマに陥る。
工藤さんが挙げる第三の「知る」は、「情報をつかんでいるプロを知ること」だ。「介護は情報戦です。制度や手続きに詳しい人は当然、『あそこの特養で、近くベッドの空きが出そうだ』という、地域にある施設の事情にも通じている。そういうケアマネジャーさんだと仕事と両立できるプランを作るのに心強い」という。
工藤さんは、「でも、そういうケアマネさんの人柄も含めた情報は、正規のルートからは得にくい。時々、地域で開かれる『介護カフェ』に出掛けて、雑談の中で聞いてみるのも手」と話している。
工藤さんは、近著「ムリなくできる 親の介護」(日本実業出版社 1512円)=写真=でも、介護と仕事を両立するための考え方などをアドバイスしている。
(三浦耕喜)
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