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【社会】不適切勤労統計 雇用保険数10億円過少給付

2018/01/10

さらに膨らむ可能性 偽装ソフトも作成

 賃金や労働時間の動向を把握する毎月勤労統計の調査が不適切だった問題で、この統計を基に算定する雇用保険の失業給付などで過少給付があり、総額が少なくとも数10億円に上ることが分かった。厚生労働省は精査を進めており、さらに過少給付額が膨らむ可能性がある。厚労省は過去にさかのぼって不足分を支払う検討を始めた。

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 また厚労省の担当者が2004年に本来とは異なる調査手法に変更した後、担当者間で15年間引き継がれてきた可能性があることも判明した。調査手法を正しく装うため、データ改変ソフトも作成しており、厚労省の組織的な関与の有無も焦点の一つだ。

 厚労省は近く、これまでに判明した事実関係について公表する。政府統計を所管する総務省も、17日に専門家らによる統計委員会を開催し、厚労省から今回の事態について説明を求める。

 勤労統計調査は都道府県を通じて行い、従業員500人以上の事業所は全て調べるルール。誤りがあったのは東京都内の事業所分で、対象は約1400事業所あったが、3分の1程度しか調べていなかった。さらに、全数調査に近づくよう見せかけるため、統計上の処理が自動的に行われるようにプログラミングされたソフトも作成されていたという。

 東京都以外では、不適切な調査手法は確認されておらず、ある厚労省幹部は「事業所数が多いため、一部を抽出したのではないか」とみる。厚労省は、過去の担当者にも事情を聴くなどして、こうした処理が始まった詳しい経緯を調べている。ただ既に退職した職員もおり、全容解明には時間がかかる見通しだ。

 勤労統計は雇用保険の失業給付の上限額や、仕事によるけがや病気で労災認定された場合に支払われる休業補償給付などの算定基準に使われており、15年間の統計自体が誤っていれば、これらの給付額にも影響が出る。このため厚労省は、統計データを検証するとともに影響が及ぶ人数や金額などの特定を急ぐ。