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【社会】日本人と話したいのに 外国人労働者 少ない交流 共生に「壁」

2018/12/26

 外国人労働者の受け入れ拡大を巡り、政府が二十五日決定した総合的対応策では、「共生社会の実現」に向けて外国人向けの相談窓口の新設、行政サービスの多言語化などの施策が盛り込まれた。ただ、既に来日している外国人労働者からは、職場や地域で日本人と接する機会が少なく、相談できる相手も限られるなど共生への「壁」を指摘する声もあり、受け入れに向けた環境整備には課題も残っている。(飯塚大輝)=<2>面参照

 「この状況を知っていたら、今の職場は選ばなかったかもしれない」。自動車部品製造会社で働く愛知県刈谷市のベトナム人技能実習生の女性(27)はこうこぼす。

 母国の日系企業に就職する夢を描き、二〇一六年六月に来日。同市の市民交流センターで週三日、地域のボランティアが開いている日本語教室に通っているが、職場では勤務中の私語は禁止。「同僚はベトナム人ばかりで日本語をひと言も話さない日もある。もっと日本人と仲良くなりたいのに」と、交流する機会がないため生きた日本語を身に付けられない現状に不満を抱いている。

 名古屋市内の専門学校に通いながら、市内の和風居酒屋でアルバイトをしているネパール人女性、スレスタ・シタさん(26)も、バイト先の日本人従業員とは仕事上の付き合いしかない。

 日本語とビジネスを学ぶため三年前に来日。日本語を覚えるため、日本人と積極的に接したいと考えているが、「私の日本語がうまくないからか、遊びには誘われない。日本人との間に壁を感じてしまう」。孤立感を抱き、休日はネパール人同士で過ごしている。

 名古屋市の日系アルゼンチン人二世の男性(42)は、〇一年から三年間、神戸市の食品会社で派遣社員として働いた。社会保険や年金への加入を派遣元に求めたが、時給を三百円下げると言われ、納得できずに会社を辞めた。その後、定職は見つからず「あのとき、日本に相談できる人がいれば辞めなかったかもしれない」と後悔をにじませる。

 外国人との共生施策について、愛知淑徳大の小島祥美准教授(教育社会学)は「外国人労働者は人であり、納税者だ。そんな彼らに必要なサービスを提供するのは当たり前だが、企業や政府は労働力としてしか見ていない」と指摘。「結局、外国人の生活を支えているのは住民の善意だが限界がある。もっと外国人の人権を考えるべきだ」と受け入れ環境の整備を訴える。

日本語教室で学ぶ外国人ら=愛知県刈谷市の市民交流センターで
日本語教室で学ぶ外国人ら=愛知県刈谷市の市民交流センターで