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【三重】元すし職人 介護士で奮闘

2018/12/12

杭さん、腕前と気配りで 御浜の福祉施設 すしや刺し身も振る舞う 

 御浜町上野の「おろし複合福祉施設つどい」に、すし職人から転職した介護士がいる。小規模多機能施設の管理者杭徳教さん(45)=紀宝町鵜殿。職人としての技術や気配りを介護の現場で生かしている。(木造康博)

 新宮市の市街地で育った杭さんは、新宮商業高校(現新翔高校)を卒業後、家業のすし店を継ぐため、大阪市の店で3年間修業。ほぼ毎日午前7時から午後11時まで働く厳しい世界で、「お客さんのお茶を飲む角度から、湯飲みがどれくらい残っているかを考えて注いでいた」という。

 帰郷後、家業を手伝うように。新宮市内で先駆けて回転ずしを始めた店は中に入れないほどの客が集まる人気店だったが、景気の後退などから次第に客足が遠のいた。他の仕事を探す中、熊野市内でホームヘルパーの資格を取得する講座を受け「おもしろい。ますます興味がわく」と感じ、介護の現場に飛び込むことを決意した。

 31歳の時に施設を運営するNPO法人に入った。全くの異業種で当初は「接客に携わりコミュニケーションは得意だったが、移乗や排せつなどで苦労した」。先輩の助言を聞きながら経験を積み、介護福祉士やケアマネジャーの資格を得た。

 職人時代の気配りは健在で、施設を利用するお年寄りの行動から何が必要かをすぐさま読み取り、排せつなどの補助をする。提供されたカンパチやビンチョウマグロをさばいて刺し身やすしにして振る舞い、喜ばれているという。「利用者も職員もワクワクすることが大切。職人で磨いた腕前をこれからも生かしていきたい」とはにかむ。

すし職人時代の技術と気配りを介護の現場で生かす杭さん=御浜町上野で
すし職人時代の技術と気配りを介護の現場で生かす杭さん=御浜町上野で