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【暮らし】忘年会の工夫さまざま 時代に合わせ進む多様化

2018/12/03

 師走の風物詩、会社の忘年会が多様化している。最近は、働くママたちも参加できるようランチ会にする会社が増えているが、「お酒が入った方がいい」という女性社員の声を受け、帰宅時間に配慮しつつ、酒を酌み交わす忘年会を復活させる会社もある。一方、深酒して翌日に響かないよう二次会は禁止、一次会も時間制限付きという企業も。「飲み会は無駄」という声も聞かれる中、忘年会の意義を明確にする工夫をした会社もある。

 子育て中の女性社員のため、今年から忘年会を一新するのは、コンサルティング会社「サイエスト」(東京都港区)。開始を例年の午後七時から2時間早め、全部署合同で開催することに。会場も会社の会議室にして出前を取ったり、ビールを買ってきたり。

 同社は社員35人のうち約20人が子育て中のママ。これまでは彼女たちが参加しやすいよう、昼休みに酒なしで忘年会を開く部署もあったが、「あまり接点がない他の部署の人とは、お酒があった方が打ち解けやすい。普段は夜の飲み会に参加しにくいからこそ、お酒の席がいい」とのリクエストがあった。

 そこで帰宅時間が遅くなりすぎないよう、午後5時開始にして全部署合同に。会場も社内にすれば「2時間制」など制約もない。

 当日は、会社員の夫(42)に長男(6つ)を預けて参加するという営業職の町田花奈さん(35)は「2カ月前に日にちが決まったので、調整しやすかった」と歓迎。同社広報室は「社員みんなでねぎらい合うのが忘年会。母親の女性社員も努力をねぎらってもらえるようにと考えた」と説明する。

 総合商社「伊藤忠商事」(同区)は2014年、「一次会は午後10時まで。二次会はなし」という社内ルールを定め、ホームページで公表している。忘年会も例外ではない。夜遅くまで残業する慣習を見直すためで、取引先との飲食も一次会のみでお開きとするよう、先方に説明している。

 同社広報部は「二次会、三次会と深酒して翌日の仕事に響くのは非効率的。商社といえば、飲み会が当たり前という時代ではありません」ときっぱり。

 世の中に社内飲み会を敬遠する雰囲気もあるが、忘年会の意義を明確にすることで参加を促す社も。金属加工の「恵那金属製作所」(岐阜県中津川市)は16年から、社員約150人から1年間最も頑張った社員をMVPとして表彰している。選考は役員が担い、16年は現場教育、17年は品質保証の国際認証取得への貢献度というように、選定理由は毎年変えている。

 取締役の市岡真二さん(45)は「表彰される社員を見て、『来年は自分も』と思ってもらえれば。忘年会は、来年に向けてモチベーションを高める場でもあると思うので」と説明する。

 働く人たちも忘年会の変化を感じている。かつて一部の会社では、幹事を任せた若手の才覚を見極める場が忘年会という因習もあった。よい店を選び、場を切り盛りして盛り上げるのは必須だった。今は、そんな考えは少数派になってきたが、名古屋市緑区の銀行員男性(46)は「店の予約やスケジュール調整、当日の進行などがテキパキできないと1人前と認められない。段取りが重要な仕事もあって、忘年会はそうした力を磨く訓練の場でもあるのでは」と話す。

 (添田隆典)