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【暮らし】過密勤務実態知って 3日間帰れぬ日も

2018/12/05

 「『退院したら、労災申請して会社と戦う』と言っていたのに…」。7月、渋谷労働基準監督署に、亡くなった夫=当時(68)=の労災認定を申請したさいたま市の女性は、唇をかんだ。東京都内の私立高校で警備員をしていた夫に異変が起きたのは、2月の夜勤中。急性心筋梗塞で倒れて搬送され、4月に他界した。多い月だと、残業時間は「過労死ライン」とされる80時間を大幅に超える130時間に達していた。

 夫は、勤めていた会社を早期退職し、2006年に都内の警備会社に契約社員として入社。高校には約4年前から派遣されていた。倒れた当日は、自宅に「息が苦しい」と助けを求める電話があり、長女が救急車を呼んだという。

 女性の代理人の弘中章弁護士(東京都)によると、警備会社から取り寄せた資料や同僚の証言などを整理すると、倒れる直前6カ月は、月の残業時間が50~130時間だった。始業は平日は基本、午後4時で、土日祝日や長期休業中は午前8時半や午後1時。いずれも夜勤をして翌朝8時半に勤務を終えていた。

 会社側が保管していた出勤簿には、午前8時半に勤務を終え、休みなしに引き続き翌日の24時間勤務に入ったと記録されている箇所が複数あった。午前8時半まで勤務したのに、休みとされている日もあった。

 労働基準法は1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えて働かせる場合、あらかじめ労使間で協定を結び、労働基準監督署に届け出るよう使用者に義務づけている。警備会社では、月45時間、年間360時間まで残業を認め、月95時間、年間720時間を上限とする特別条項を設けていたが、夫の場合、残業が多い月はこの条項も上回っていた。残業代は支払われていたという。

 弘中弁護士は休日の問題も指摘。同法は、原則「午前0時から24時間」の法定休日を週1回与えるよう定めている。だが、倒れる前の1カ月に夫が取得した法定休日は2日のみ。「十分な休息を確保できておらず、法の趣旨に反する労務管理だった」とする。

 勤務が特にきつくなったのは昨年9月以降。3人のシフト制だったのが、1人が休職して2人態勢となり、勤務日数が増えた。夫は会社に人を増やすように要望していたが、補充されなかったという。

 仕事内容は校門の施錠や解錠、エアコンの管理などで力仕事はあまりなく、午前0時から5時間は仮眠時間とされていた。しかし、午後8時から午前6時の間に4回、校内の巡回があり、週に3日は午前4時から調理実習で使う野菜を受け取る業務もあった。

 3日連続で帰宅できない日もあり、冷凍した弁当6つを学校に持参していた日もあった。女性は「主人は『学校が工事中で、守衛室はプレハブ造りの部屋で寒い。仮眠もよく眠れない』と言っていた。高齢な主人には過酷な労働環境だった」と訴える。

 会社側は取材に応じて、「遺族が労災申請をしたことは事実であり、資料を労基署に提出するなど誠実に対応している。審議中のため、具体的なコメントは差し控える」としている。

 昨年2月に兵庫県のトンネル工事現場で働いていた60代男性が待機中に倒れ、急性虚血性心不全により死亡した事案では、遺族が但馬労働基準監督署に労災申請し、今年6月に過労死と認定された。男性も長時間労働が原因で、亡くなる3カ月前の残業時間は月平均82時間、最も多い月は100時間を超えていた。

警備の夜勤中に倒れて亡くなった夫の遺影。勤務簿を示し、女性は「過労が原因」と訴える=さいたま市内で
警備の夜勤中に倒れて亡くなった夫の遺影。勤務簿を示し、女性は「過労が原因」と訴える=さいたま市内で