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【暮らし】休める環境、工夫し整備 企業の取り組み広がる

2018/10/22

 働き方改革が進む中、従業員が休みやすい環境を整える取り組みが広がっている。休み方をアドバイスする役職を置いたり、連休を取った社員に手当を出したり。年次有給休暇(年休)取得を増やそうと、来年4月からは、新たに年休が10日以上与えられた労働者に、日を指定して1年間で5日間を取得させることが使用者に義務付けられるため、動きが加速しそうだ。

 「毎月1度は金曜などに半休を入れて“プチ休暇”にすると、生活にリズムができていいよ」

 化粧品販売「メディプラス」(東京都渋谷区)の岡元朋子さん(48)が商品開発担当の鶴岡里沙さん(31)に笑顔で語りかけた。

 岡元さんは、社員の年休取得日数や残業時間を管理し、改善方法を助言する「チーフ・スマイル・オフィサー(CSO)」。3年前に新設された役職だ。社員1人ずつに年1回、「有給休暇カウンセリング」を実施し、年間の大まかな取得計画を立ててもらい、実績を一緒に確認する。同社の社員手帳には、カウンセリング時の年休日数と有効期限、取得予定日を記入する「ペース配分表」のページも。以前は自分の年休日数を知らない社員もいたが、昨年9月から一年間の取得率は役職を新設する前の倍の62%。岡元さんは「いつ休み、何をするかを考えることで生き方を見つめ直し、より良い仕事をしようという意欲につながる」と話す。

 ベンチャーのIT会社「ロックオン」(大阪市)は創業当時、社員が休みを取ろうとしなかった状況を改善しようと、2011年から全社員に年1回、9連休の取得を義務付けた。4日間は土日、2日間は年休を活用、3日間は特別休暇だ。

 期間中は電話やメールを含め、会社との連絡は一切禁止。引き継ぎを徹底して業務の属人化を防ぐことも目的の一つで、広報の金ナリさん(35)は「普段から業務をマニュアル化したり、情報交換したりして仕事を共有することで、休みやすくなっている」という。

 リクルートキャリア(東京都中央区)は前身のリクルートエージェントの時代から年1回、連続四日以上の年休を取得した社員に5万円の手当を支給している。毎年9割近くの社員が制度を利用しており、広報部の池津祐樹マネジャー(30)は「仕事が好きで休まない人もいる。休むきっかけづくり」と話す。

 子育て支援と連動した取り組みもある。十六銀行(岐阜市)は昨年、男性行員が妻の出産予定日の前後に計3日間、休める制度を導入。人事グループの島田文章課長代理(38)によると、以前も妻の出産で年休を使う行員もいたが「制度化して取りやすくした」といい、昨年度は対象者の9割以上が利用した。

◆年休消化 来年4月、義務化
 厚生労働省によると、16年の1年間に労働者に与えられた年休は平均18・2日だったが、実際に取得されたのは9・0日(49・4%)にとどまる。6月の労働基準法改正で、10日以上の年休が新たに与えられた労働者には、付与から1年以内に本人の希望を踏まえて期日を指定し、5日分を取らせることが企業に義務付けられた。違反すれば、罰則もある。

 銀行勤務の経験がある名古屋学院大教授の江口忍さん(53)は「人手不足の中、働き方改革を進めなければ良い人材が獲得できなくなっている」と指摘。「ただ、形だけ休みをとっても、自宅に仕事を持ち帰っていては意味がない。本当に休めるような配慮や管理を、上司らがしているかをチェックし人事査定に反映することも必要」と話す。

 (山本真嗣)

有給休暇取得のペース配分表などを見ながら、休み方をアドバイスする岡元朋子さん(左)=東京都渋谷区で
有給休暇取得のペース配分表などを見ながら、休み方をアドバイスする岡元朋子さん(左)=東京都渋谷区で