2009/01/25
不況の波は障害者にも-。民間企業に就職した障害者の解雇が急増し、相談が相次ぐほか、新たな働き口を求めて就労訓練に逆戻りするケースも出てきた。2006年の障害者自立支援法の施行や、障害者雇用促進法の改正でようやく根付いた障害者の働く場にも、景気の荒波が及んでいる。
長野県北信地方の家電解体会社に勤めていた精神障害のある男性(30)は昨年の初めから、初めて1日8時間のフルタイムの仕事に就いた。しかし突然、会社の業績悪化で、昨年9月いっぱいで解雇された。9カ月間働き、生活への自信を感じ始めたころだった。
「経営状況が理由なので仕方なかったが、早く職場に戻りたい」と男性。失業保険を受けながら、就業訓練として紹介を受けた地元の老人施設で清掃の業務に就いている。就職のため、パソコン講座にも通い始めた。
長野市で障害者の就労を支援する社会福祉法人「ともいき会・ウィズ」には、この男性を含めて昨年末までに4人が戻った。市内の製造業などで正社員として働いたが、下請けの製造業を取り巻く環境は厳しく、辞めざるを得なかった人たちだ。センター長の越川睦美さん(57)は「企業も泣く泣く切る、という感じだった。企業の存続か雇用かの選択で、それだけ事態は深刻化している」と話す。
同じく、障害者の就職訓練などに取り組む名古屋市障害者雇用支援センター(熱田区)によると、昨年11月末以降、障害者や家族らから「解雇された」といった相談が十数件、寄せられた。
就業のための訓練も、定員(30人)を上回る状態が続いており、数カ月待ちの状態という。宮崎潔所長(57)は「解雇された人は製造業のほか小売業が一部あった。学校を卒業して就職したばかりの人が目立ち、落胆が大きい」と話す。
障害のある女性パートを解雇した中部地方の製造業人事担当者は「企業として(雇用の)責任はあるが、致し方なかった」。この会社では、受注が途絶えて工場の1つを閉鎖に踏み切って、障害者を含む従業員11人を解雇。「ここまで冷え込むと、自助努力ではどうしようもない」と嘆く。
国や自治体は企業への助成制度を設けて障害者の雇用機会の拡大に努め、昨年末には国が緊急的に助成を増額。しかし、助成金を返還してでも雇用を断たなければならない現実を、企業側も抱えているようだ。
■倉知延章・九州産業大国際文化学部教授(障害者雇用)の話…不況で障害者の雇用を支えきれなくなった今こそ、企業に対する国の支援体制が必要だ。障害者への支援はいろいろとあるが、障害者を受け入れる企業に、雇用を継続できる環境を整えられるような仕組みが求められる。
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