2009/01/26
非正規切りに加え正社員の解雇も目立ち始めた中で、あえて派遣社員らを正社員に採用する企業が出てきた。人件費は増えるが士気が高まるメリットは大きい。政府も正社員化を支援すべきだ。
東京・日比谷公園での派遣村問題後、産業界でも職と住居を同時に奪うような解雇を戒め雇用の大切さを強調する声が出てきた。
段ボール最大手のレンゴー(本社大阪市)の大坪清社長は「雇用の確保が最重要だ」と語り、グループの工場などで働いている約千人の派遣社員を四月から正社員として採用することを表明した。
正社員の形態は地方勤務のローカル・スタッフと転勤が可能なナショナル・スタッフの二つ。正社員化で年間数億円のコスト増になるが「士気向上で生産効率を高めていく」と意気軒高だ。
もちろん正社員化にはほかの理由もある。労働組合は「技術の伝承には職場の一体感が必要」と要請してきたし、派遣社員はグループ内の派遣会社のスタッフだ。
グループ内派遣は今後、80%以下とする規制が行われる見通しで早めに手を打ったと言えないこともない。国内市場が中心だから非正規労働者に頼らない製造現場をつくりやすい環境にもあった。
製造業ではこのほか昨年、子会社が請負社員を大量削減して問題となったキヤノンが、派遣社員に頼らない「製造派遣ゼロ」体制を構築した。また正社員登用制度を導入し、昨年末までに期間社員約千八百人が正社員になった。
金融業界では三井住友銀行がサービス向上を目的に昨年から派遣社員二千四百人を正社員に採用。今年も四百四十人を採用する。
第一生命は派遣社員約三千二百人を四月からスタッフ社員に移行させる。直接雇用して最長六十五歳まで契約を延長する考えだ。
正社員化はまだ始まったばかり。日本企業が苦境を乗り切るには人材重視の経営が重要だ。産業界に社員を正規・直接雇用する動きが広がることを期待したい。
政府も正社員化を支援すべきだ。本年度第二次補正予算案と新年度予算案には派遣社員を直接採用したり、内定取り消し者を正規雇用した事業主に奨励金を支給することが盛り込まれている。
これらは対症療法的だ。今国会で審議予定の労働者派遣法改正案は日雇い派遣の原則禁止が柱だが、もっと踏み込んで製造業派遣も禁止するなど非正規労働者自体を減らす施策が不可欠である。
転職・求人情報検索(名古屋市・愛知県・岐阜県・三重県)はトップから