2009/01/16
「非正規切り」が急増する中、今年の春闘が始まった。業績悪化で賃上げは困難との声もあるが、それでは景気も世の中も元気が出ない。労使トップは雇用維持と賃上げの両立に向けて知恵を絞れ。
春闘の幕開けを告げる日本経団連と連合の労使首脳懇談会が十五日開かれた。世界同時不況で非正規雇用労働者などの解雇問題が深刻化したため、雇用の安定・創出について異例の「共同宣言」が発表された。
労使交渉の環境は激変した。昨年まで五年連続の賃上げを獲得した労働組合側も、ことしは雇用維持を前面に掲げて闘わざるを得ない状況に追い込まれた。
不況はこれからが本番だ。政府見通しでは本年度はマイナス成長、来年度は実質ゼロ成長である。昨年の企業倒産件数は前年比11%増の一万五千件と高水準。春闘がヤマ場を迎える三月中旬には倒産も失業者も一段と増える恐れがある。
主要企業では春闘相場のリード役、トヨタ自動車が今三月期連結決算で約千五百億円の営業赤字に転落するという。ソニーなど大手電機も厳しい業績。賃金カットに踏み切るところも現れてきた。
経団連は昨年の経営労働政策委員会報告でベースアップに否定的な見解をまとめた。御手洗冨士夫会長は「ベア回答できる企業は極めて少ない」とも語っている。
こうした経営側の厚い壁を前にした労組側の対応は容易ではない。連合は今春闘で物価上昇分としてベア1%台半ば、四千円程度を要求する方針を決めた。個人消費の活性化と労働者の生活向上、格差是正などが理由だ。
しかし解雇者急増や賃金カットという現実を前に、運動はいまひとつ盛り上がりを欠いている。
今春闘は労使対立が強まりそうな雲行きだが、大事なことは日本の将来を見据えての労使トップの大局観だろう。とくに経営側には経済再建の責任がある。
企業には好業績で蓄えた内部留保がある。大企業十六社だけで合計額は二〇〇八年九月末で約三十三兆六千億円、という。企業の「埋蔵金」であり雇用維持や賃上げに活用する余地がある。
労組側、とくに連合は全労働者の視野に立って危機感をもっと持つべきだ。正社員だけでなく非正規労働者の待遇改善に真剣に取り組む。経営側との厳しい交渉なしに待遇改善は実現しない。誰のための労働組合か-今年は存在価値が強く問われている。
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