2009/01/16
耳と集中力、忍耐必要
ピアノの音の高さを合わせ、響きの良い状態に仕上げる調律師。その耳は半音の百分の一の違いまで聞き分けるという。碧南市の名曲堂で調律を担当する茶畑博人さん(46)に仕事を体験させてもらった。
アップライトピアノの鍵盤のふたなどを外す。「鍵盤をたたくと、てこの原理でハンマーが上がり弦をたたくんです」。音が鳴る仕組みを説明してくれた。
作業はまず基音を合わせることから。四四〇ヘルツの音叉(おんさ)と、鍵盤のラの音が合うように、弦を留めてあるピンをチューニングハンマーで微妙に動かす。
次に基音を軸に一オクターブの正しい音階をつくる。この作業で大事なのが「うなり」という。ラとレの音を同時に鳴らして「フワン、フワンとうなりが聞こえるでしょう。これが一秒間に一回の状態」と茶畑さん。チューニングハンマーを動かし「二秒に一回のずれた状態はこう」。「???」。記者には違いがさっぱり分からない。小学生時代にピアノを習っていたはずなのに…。
「試してみますか」と言われ、チューニングハンマーに手を掛ける。一本の弦にかかっている力は八十キロ。ぐっと腕に力を込めるとピンがわずかに動いた。鍵盤をたたくと、出た音は先ほどとは違い明らかにひずんだ。
調律は、弾いた時の感触をそろえる整調と、バランスの取れた音色にする整音も不可欠。お客さんの自宅を訪れて作業をするので、九十分程度でこなすスピードも要求される。「集中力と忍耐が必要な仕事です」と茶畑さん。ピアノの機種や材質、部屋の環境でも音は変わる。「ピアノに合わせた臨機応変な対応ができるまで、十年かかりましたね」。奥の深さに驚いた。(坂口千夏)
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【メモ】ピアノの調律師になるには、メーカーの養成機関や専門学校、音楽大学の調律科などで基礎的な技術・知識を学ぶのが一般的。茶畑さんも就職後、養成機関に1年間通った。生計をたてる目安は1カ月に30台以上。料金は、名曲堂では定期的に調律を受けているアップライトピアノの場合、1台1万1550円。
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