2009/01/15
不況で多数の非正規雇用労働者が失業に追い込まれている。だがセーフティーネットの雇用保険には約一千万人の非正規労働者が未加入(二〇〇七年度厚生労働省試算)。同省は四月にも加入条件を緩和する方針。その変更点や使い方のポイントを紹介する。 (服部利崇)
海外旅行の派遣添乗員の大島由紀さん(44)と境千代香さん(48)は昨年、ようやく雇用保険に加入できた。
「正社員しか入れないと思っていた。本当にうれしかった」と大島さん。慢性的な長時間労働で、健康に不安を抱えながら仕事をしている。境さんは「保険に入って気持ちが楽になった」と喜ぶ。
雇用保険は強制加入保険。原則派遣社員や所定労働時間(一週間)二十時間以上のパートも加入できるが、「一年以上の雇用見込み」の条件がある。
派遣添乗員は一ツアー(平均八-十日間)ごとの雇用契約。二人は約十年間同じ派遣元で働いてきた。しかし派遣元はハローワークから指摘を受けるまで「短期間契約で、継続雇用も見込めない」という理由で加入を認めなかった。
このケースのように、雇用見込み期間の条件が壁になり、雇用保険に入れない非正規労働者は多い。
そんな労働者を救うのが、今回の雇用保険法見直し案の狙いで、雇用見込み期間を六カ月以上に短縮。見直し案が国会で成立すれば、厚労省試算では、約百五十万人の非正規労働者が新たに加入資格を得ることになる。
ただ加入できたとしても、被保険者期間が短いと失業給付は受けられない。原則過去二年間に十二カ月以上が必要だ。正社員の場合、倒産や解雇など会社都合の場合に限り一年間に六カ月以上で給付される。
今回の見直し案では、非正規でも、会社都合で失職した場合、正社員と同じ「一年間に六カ月以上」に統一した。また、再就職が困難な人に対し、三年間の暫定措置として、給付日数を六十日延長できる仕組みも整えた。
失業給付の支給の流れは正規・非正規とも同じだ。申請から支給まで最低一カ月かかる。すぐに支給されないので、多少の蓄えは必要だ。
失業したら、会社(派遣なら派遣元)からなるべく早く離職票をもらい、住所地のハローワークへ申請しよう。離職票に記入された内容は必ずチェックする。会社側が記入するので、離職理由や離職前賃金が間違っている場合もある。給付開始時期や支給総額に影響するので注意が必要だ。
離職理由が「自己都合」だと、「会社都合」の場合より三カ月支給が遅れ、給付日数や総額が減ることもある。「セクハラ」や「過重労働」などが理由の場合、書類上は自己都合になるが、ハローワークの聞き取り調査などで証明されれば、扱いは会社都合と同じになる。
失業給付を受けるには「働く意志」が不可欠。四週間ごとの失業認定で「月二回以上の求職活動」を届け出ないと給付は打ち切られる。制度が複雑で分かりにくい雇用保険。「分からないことがあったらハローワークに相談する」(厚労省雇用保険課)のが鉄則だ。
日本労働弁護団常任幹事の鴨田哲郎弁護士は「今回の見直しでも、まだ加入のハードルが高い。政府は雇用保険だけでなく、社会保険と生活保護を組み合わせた、国民の生活を守る公的セーフティーネットの構築を進めるべきだ」と話す。
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