2009/01/13
成人の日の12日を中心に各地で開かれた成人式では、振り袖姿の女性や旧友との再会を喜ぶ男性たちの明るい笑い声がはじけた。一方、列島の不況は深刻化の一途。働く新成人の職場環境にも暗い影を落としているが、「仕事を始めた時の初心を」と成人の日に決意を新たにする人も。
「先行きが見えない」。名古屋市の会社員早川裕達さんは、うめくように言う。トヨタ系自動車部品メーカーと取引する金属研磨会社で飛び込み営業を担当する。
中学卒業後、「ビッグになったろう」と17歳で就職。当時、景気はよかった。午前8時から午後5時まで懸命に働いた。
目に見えて仕事が減りだしたのは昨夏。そして、トヨタショックは決定的だった。「売り上げは最盛期の5割くらいに減った」
以前は飛び込みの営業先でもコーヒーがふるまわれることがあった。近ごろは「話すことない」「仕事? ないね」と、門の中にも入れてもらえない。どの会社も厳しい。「仕方ない」とも思う。
終業時間は2時間早められ、午後3時になった。「人が残っていると、電気代がもったいない」という会社の判断だ。
「おれも会社もビッグに」。前向きな気持ちは昔のままだが、仕事は減る一方だ。早川さんは成人式で旧友に笑顔を見せながら、一言つぶやいた。「不安」
働く新成人たちに逆風は容赦ない。三重県いなべ市の板金塗装会社で自動車修理に励む大河内保典さんは「この冬はボーナスが出なかった」。昨年は原油高騰で車の利用が減ったせいか、修理が少なかったという。
岐阜県瑞穂市の自動車部品メーカー事務、酒衛麻衣さんも不安げだ。「稼働日も少ないし、残業代もカットする方向。会社の雰囲気も暗い」
受注が減り、半日で仕事が終わる日が続くと明かすのは、シャッター製造工場の生産ラインで働く会社員川島郁子(ふみこ)さん=福井県坂井市=だ。「最初は仕事が楽になったので喜んだ」と率直に語るが、日に日に不安に。
とはいえ、成人の日は若者たちが未来への希望を描く日でもある。
大河内さんが「お客さんに信頼され、たくさん仕事が取れるようになりたい」と話せば、「春から後輩もできる。きちんと教えられるようになりたい」と酒衛さん。
川島さんには、成人式が自分を見つめ直す機会になった。「きょうを機に、社会に出て頑張ろうと誓った初心を思い出したい」
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