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【雇用崩壊】失業者対応で悲鳴 自治体、連日綱渡り

2009/01/10

 景気悪化で、住まいや仕事を失った非正規労働者らの支援に追われる末端の自治体から、悲鳴が上がっている。「派遣切り」で連日押し寄せる人たちに施設だけでは足りず、企業の寮などを借りて一時的に提供する綱渡りの対応が続く。国の規制緩和のツケが、不況で一気に回ってきた形で、「政治が責任を持つべきだ」と訴える。

 「受け入れが限界に近づき、1自治体では対応が困難になっている」

 9日、名古屋市の幹部が横浜や大阪など7つの政令指定都市を代表して厚生労働省に出向き、国に抜本的な打開策を求める緊急要望書を手渡した。

 音頭を取ったのは名古屋市。「国の労働行政の結果、生じた事態だ」と言う市保護課の大森益男主幹(55)は「短期間で解雇された人の多くが、雇用保険の受給資格がないのが問題。国は雇い止めになった人が路頭に迷わないようにすべきだ。規制緩和とセットでセーフティーネット(安全網)を用意しなかったことが今日の状況を生んだ」と指摘する。

 同市が設けた緊急の宿泊施設を利用する人は現在、174人。仕事始めの5日にはホームレス用の緊急宿泊援護施設があふれ、宿を見つけようと担当者が電話をかけてようやく10数件目に1泊だけのカプセルホテルを見つけた。翌日、運良く空き室のある派遣会社の社員寮を借りられ、何とか急場をしのいでいる。連日、100人程度が殺到する「非常事態」は今も続き、窓口で相談に追われる市職員は、書類の整理を終えると帰宅は深夜だ。

 法改正で5年前から、派遣労働が製造業に解禁され、不況の“調整弁”の犠牲となって助けを求めてくる人たちは、ホームレスとは異なり、働く意欲も能力もあるのに突然、路上に放り出された。なのに、自治体にはホームレス支援の枠組みしかなく、その中で住居の確保に追われる市職員は「矛盾を感じる」と言う。

 年度末の3月には大量の「雇い止め」が出る事態も想定され、市の担当者は「そのときはどう対応すれば」と不安を感じている。国には、支援で負担が急増している自治体への財政支援や、雇い止めで寮を追われた人らに家賃や就職活動の費用など最大186万円を貸し付ける制度が昨年末に始まったのに知られておらず、周知徹底を求めた。