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【愛知】ハローワークで異例の求人 工業高の先生

2016/04/07

人数/10(6日時点) 勤務地/愛知県
退職者増と好景気要因

 求ム 工業高校の先生-。愛知県の県立高校で工業系の教科を担当する教員が不足し、学校側が、公共職業安定所(ハローワーク)に講師の求人を出す異例の事態が起きている。背景には、民間企業の採用数が増える中、学生の民間志向が高まったことがありそうだ。県教委の担当者は「非常勤講師らで穴埋めし、授業には支障を来さない」と説明するが、人繰りに不安を残したまま、各校は七日に始業式を迎える。(赤川肇)

 ◇ ◇ ◇

 「急募!」。ハローワークの求人情報をインターネット上で検索すると、5日時点で、県立高校4校が計12人、6日時点でも3校が計10人、いずれも常勤講師を募っている。

 仕事内容は「工業高での教育活動、施設・設備・備品の管理、部活動の指導、学校運営業務」とある。

 県教委教職員課によると、採用試験に合格した正規教員と違い、常勤、非常勤講師には雇用期限がある。常勤は原則1年、非常勤は個々に契約する。各教科の教員免許を持つことを条件に、各校長が選ぶ。高校ごとに人脈を頼ったり、求人情報を出したりして探すのが一般的という。

 2016年度は、定年退職後の再任用を希望する工業教員が15年度の71人から48人に減った。この影響で常勤講師でまかなうべき教員が15年度の29人から57人にほぼ倍増。3月下旬時点で26人が不足した。

 尾張地方の工業高校は、必要な常勤講師3人のうち2人が見つからず、初めてハローワークを利用した。「好景気で、正規教員の採用試験に合格しなかった学生らが講師としての勤務は希望せず、民間企業に流れたようだ」と教頭。非常勤講師や正規教員らの授業を増やして穴を埋める。部活動指導なども含め、しわ寄せはいくが、「助け合ってやっていくしかない」。

 愛知県立の工業高校は、普通科との併設校二校も含め16校。15年度の教員採用試験の実績によると、工業教員の受験者数は東京、大阪に次いで全都道府県中3番目に多く、競争倍率は5・6倍。

 このため、関係者からは「採用試験で必要な人数を確保しなかった県教委の責任」を問う声もある。教職員課の担当者は「質の確保も重要。採用数を増やせばいいわけではない」と反論する。

 文部科学省初等中等教育局の担当者は「全国的には工業教員の採用が特別難しいわけではない」と話している。

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◆企業でも人手不足

 ものづくりが盛んな中部地方の企業では人手不足感が強まっている。開発競争の激しさとともに、少子高齢化が背景にある。

 愛知労働局によると、愛知県の2月の有効求人倍率は1.59で、全国平均(1.28)を大きく上回り、都道府県で4番目に高い。岐阜県は1.66と全国3位。三重、静岡を加えた東海4県でみても1.48と高い。

 愛知県の職業別では開発技術者が3.23、情報処理・通信技術者が3.56と技術職の高さが目立つ。

 自動車部品大手のデンソーは、2016年度の採用計画で、研究開発に携わる技術職を中途を含め前年度比で2割増やす。自動運転や環境対応に多くの技術者が必要になっているという。

 トヨタ自動車は非正規の期間従業員の待遇改善を進めており、今春闘でも賃上げを満額回答した。さらに技能伝承を進めるため、16年度は500人を正社員に登用する計画で、前年度より3割増やす。

 帝国データバンク名古屋支店が15年に実施したアンケートでは、愛知県の企業の4割が「正社員が不足している」と回答している

工業高校の求人情報。「急募!」の文字に切実さがにじむ
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