2008/08/27
草履1足 5時間の奮闘
履物や布団などかつては多方面に利用されていたわらが、化学製品などに押され生活の中から消えつつある。廃れゆくわら製品作りの技術を受け継ぐ職人に一日弟子入りした。
体験先は山里のくらしを現代に伝える観光施設「三州足助屋敷」(豊田市足助町)。六十年以上前からわら製品を作ってきた小野君子さん(75)に、わら草履づくりの指導を受けた。
まずは、わらをつちでたたく作業から。三キロはあるつち片手に、力任せにたたき始めると、「あんた農家の子じゃないね」。中腰の姿勢で台と平行にふり下ろすように指導されたうえに「千回はたたくもの」。気が遠くなった。
汗だくで終えると、次は草履の縁となる縄づくり。手のひらで二組のわらの束を交互に回転させながらなうはずが、手が滑らず回らない。左右に引っ張ったり、指先でねじったりしていると、小野さんに「そんな作業はいらん」。小気味よく回しながら、次々と縄になる小野さんとは対照的だった。
左右からわらを編んで草履の底を作る作業は、二、三本のわらを接ぎながら、ひたすら一時間。底にすき間ができないよう、力任せに引っ張り続けた。終了後、チェックしてもらうと「若いだけあってしっかり固まっている」。空回りし続けた力がようやく生かされ、最後の最後で褒めてもらった。
五時間かけて完成したものの、長さが左右五ミリずれ、幅も均一でない不格好な草履。「昔は駄目になると『畑に捨てなさい。肥料になるから』と怒られたもんだよ」と教えられた。先人の知恵に驚きながら、今までごみとして捨てた靴を思い出した。(池田宏之)
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【メモ】「三州足助屋敷」では、わら細工に加え炭焼きや機織りなど11職種、約20人の職人が働く。勤務時間は8時半-17時15分。週休2日程度で、休館日の木曜以外はシフト制。月収は大卒で約19万円だが、未経験で職人になる場合、正社員になるまで2年はかかる。
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