2015/10/05
9月30日、国際宇宙ステーションに物資を届けた無人補給機「こうのとり」5号機が任務を終え、大気圏に突入して燃え尽きた。「無事に役目を果たし、ホッとしました」。機体組み立てを担った東明工業(愛知県知多市)の石堂輝政さんは目を細めた。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発・運用するこうのとり。機体の製作は、三菱重工業が航空宇宙産業が盛んな愛知県内の工場で進めている。実際の作業を担っているのは、メーカー下請けの中小企業の作業員たちだ。
機体は直径4・4メートル、全長9・8メートルの円筒形で、観光バスが収まる大きさ。大きく4つの部位に分けられ、東明工業はそのうち3部位を担当。石堂さんが中心の4人のチームが作業をする。
組み立ては、ほとんどが手作業だ。作業自体は航空機の製造と大きな違いはないが、「失敗が許されない」と石堂さん。宇宙船は、いったん打ち上げたら地上に戻ることがない。設計通りの完璧な組み立てが要求され、作業中は常に緊張を強いられる。
機体が完成するまでに6万カ所の穴を開ける。大きなもので、長さが3メートル以上もあるアルミ合金製の部品同士の位置を正確に合わせて穴開けをし、びょうで接合していく。数10万の工程があり、1年かけて1機を完成させる。石堂さんのチームは、この4年ほどはミスがなく、技術力が高く評価されている。ミスしないために必要なのは「確認」だ。作業中に少しでも不安を感じれば、図面で確かめる。
子どものころから戦闘機のプラモデルを作るなど、ものづくりが好きだった。日本航空専門学校(北海道)に進学し、東明工業に入社。最初は、カナダのメーカー発注のプロペラ機のドアを担当した。「部品を一から組み立て、航空機の形が出来上がったときに達成感を感じた」
昨年以降、米国やロシアの補給機3機が打ち上げに失敗した一方、こうのとり5号機が成功し、日本の宇宙技術への信頼が高まった。「国家プロジェクトに携われるのが誇り。最後のこうのとりまで、ミスなく完成させたい」
(文・写真、稲田雅文)
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