2015/10/05
営業職は女性の進出が遅れている職種の1つ。常態化している長時間労働と家庭生活を両立させようと、営業職の女性が業種を超えて連携し、両立策を模索している。仕事の効率化や健康管理の方法、上司の意識改革など、見直すべき点は山積み。“営業女子”発の働き方改革を追った。
「長時間労働しなくても成果を出せると、当たり前に思える社会を目指したい」
東京都内の企業の会議室で、9月に開かれた「新世代エイジョ(営業女子)カレッジ」の成果報告会。サントリーフーズ広域営業本部で、大手小売店の営業を担当する大八木那奈さん(30)が訴えた。
カレッジは、営業職女性の交流や意識改革の場にしてほしいと、サントリーホールディングス(HD)のほかリクルートHD、日本IBMなど異業種の大手七社が昨年6月に設立。今年も、20~30代の営業職女性30人が参加。結婚や出産を経ても働き続けるための方法を議論し、報告会に臨んだ。
大八木さんらのグループが重点的に検討したのは、営業職の時間の使い方。営業職は一般に「何をさしおいても取引先に尽くす」との意識があり、結果的に長時間労働が当然視される。大八木さんも繁忙期には仕事が深夜に及ぶ。今年結婚したが、同僚に子どもがいる女性がおらず、将来像が描きづらいという。グループの調べでは、営業職女性の約9割が「将来は育児と両立できない」と、転属を希望している。
ところが、グループ内で議論するうち、長時間労働に多くの無駄があると分かった。唯一、育児中の女性は、必要性が低いメールへの返信を省くなどの工夫をして、グループのメンバーより2時間半も短い実労働時間を実現。後日、他のメンバーもこれを参考に無駄を省いてみると、約1時間半短縮できた。夜の取引先との付き合いも必須のものはほとんどなく、単にムードで残業を続けていたことに気付いたという。
報告会でこのグループは、限られた時間で業務に集中するため、毎日の業務の残り時間などをパソコン画面に表示する「エイジョタイマー」の導入を提案。大八木さんは「自発的に仕事を調整すれば、両立できると確信した」と話す。
報告会ではほかに、3人の子を育てる日産自動車営業本部の中村桂子さん(37)が、営業職の独身女性が睡眠不足に陥り、塩分の高い食事をとることが多いとして、「体調を整えるための学びの場が必要」と発言。医師らによる講座開催を提案した。
◆管理職と共に勉強会
管理職の立場から、営業職女性を支援する取り組みも始まっている。
異業種の営業職女性の自主的な交流の場として6年前に設立され、3000人弱が参加する「営業部女子課」。内部の勉強会の一つ「営業部BOSS(ボス)課」は今月から、営業職女性の部下を持つ男女管理職と、管理職候補の女性営業職を対象に、求められる職場のリーダー像などについて意見交換を行う。
「営業部女子課」の太田彩子代表理事(40)らが、3年前に会員256人を対象に行った調査では、「営業職を続けるか」の問いに、過半数が「上司次第」と答えた。太田さんは「営業部門の管理職には、部下の女性の働き方を支え、女性ならではの強みを仕事に生かせるよう求めていきたい」と話す。
(安食美智子)
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