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【地域経済】東海の工作機械メーカー ネットで結び効率生産

2015/09/17

IoT活用 作業時間3割短縮

 東海地域の工作機械メーカーが、工場内の機械をネットワークでつなぐ「モノのインターネット(IoT(アイオーティー))」を活用し、生産効率を高めている。仕事の進み具合を画像で見えるようにし、最適な人員配置などに役立てる。各社が個別に取り組む一方、製造業全体に広げるための組織も発足した。(平井良信)

 DMG森精機(名古屋市)は7月、主力工場の伊賀事業所内に80インチの大型モニターを設けた。各設備を無線でネットワークにつなぎ、作業中は緑色、中断中は黄色で表示。作業の進み具合が一目で分かる。現場のリーダーは進捗(しんちょく)に応じて作業員を配置し直す。

 伊賀事業所だけで約40種類もの機種を造るため、これまでは各工程の進み具合を即座に把握するのは難しかった。こうした“見える化”で作業時間は3割も短縮。真鍋研二所長は「種類や量の変化に応じた人員配置と指示ができるようになった」と効果を語る。

 オークマ(愛知県大口町)も2013年に建て替えた本社工場内をネットワーク化し、機械の稼働状況をリアルタイムで把握。この結果、作業員はモニターで次に加工する部品の図面を見て素早く工具の準備ができるように変わった。花木義麿社長は「稼働状況は私の部屋からも見ることができる。情報を共有し、作業の無駄が減らせる」と話す。

 ヤマザキマザック(同)も今月、本社工場で情報の共有化を完了し、他工場にも広げる。

 製造現場の生産効率を高めるIoTの活用は、ドイツや米国で進んでいる。日本では各社がそれぞれ取り組んできたが、今年五月にトヨタ自動車やパナソニック、森精機など250以上の企業・団体が参加する「ロボット革命イニシアティブ協議会」が発足し、IoTと生産現場を結びつけるための議論が本格的に始まった。

 協議会に参加するオークマの花木社長は「国内の労働力人口が減少し、情報技術を使って現場の効率を高めることがますます必要になる。導入のための通信規格の統一など課題は多いが、業界を挙げて進めていきたい」と話している。

【IoT】 英語のInternet of Thingsの略。パソコンや携帯電話だけでなく、あらゆるものがインターネットにつながることで、新たなサービスやビジネスが生まれることを意味する。膨大なデータを需要予測や分析など産業に生かす動きが活発になっており、イツでは「インダストリー4.0」、米国では「インダストリアル・インターネット」とも呼ばれている。

工場にIoTを導入したDMG森精機。上部のモニターで作業の進み具合が見える=三重県伊賀市の伊賀事業所で
工場にIoTを導入したDMG森精機。上部のモニターで作業の進み具合が見える=三重県伊賀市の伊賀事業所で