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【暮らし】難病患者の就労に理解を ハローワーク通じ企業に説明

2015/07/20

 根本的な治療法が確立されていない難病と診断されているのは、国内では100万人以上いるとみられる。薬で症状を抑えながら普通に生活できる疾患が増え、病気と折り合いながら働きたいと願う人は少なくないが、「難病だから働けないだろう」という企業側の理解のなさが就労の壁となっている。

 愛知県の40代の女性は8年前、「膠原(こうげん)病」の一種で、筋肉の炎症で手足に力が入らなくなる難病と診断された。20代から保育士の仕事を続けてきたが、疲れやすくなる症状が出たため、やめざるを得なかった。その後は事務や幼児教室の講師などの仕事を転々とした。

 再就職を目指す面接では、「自分は難病患者だが、軽い事務作業は問題ない」と説明したが、「難病では採用できない」と断られたことも。「難病は大変な病気というイメージが就職の妨げになっている」と感じた。病気に無理解な企業が多く、無理を重ねて体調を崩したりした。

 このため、ハローワークにも病気を伝え、配慮が必要なことを企業側に具体的に説明してもらうことにした。障害者向けの就労支援事業所にも一時通いながら、体力的に無理のなさそうな約20社に、ハローワークを通じて書類を送付。介護事業所にパート事務職として今月就職することができた。

 週4日の6時間勤務と負担が比較的軽い上、職場の上司や仲間から「重い物は持たなくていいよ」と気遣われている。「これまでは、病気に無理解な職場も多かったけど、ここなら頑張れるかな」

◆専門職員置き、国が本腰

 国はハローワークに専門職員を置き始めるなど、難病患者の就労に本腰を入れ始めている。

 名古屋市内では7月上旬、全国膠原病友の会愛知県支部の就労勉強会が開かれ、難病患者ら13人が参加。ハローワーク担当者から、利用できる就労支援制度について説明を受けた。女性参加者は「ある程度制度を知っていたが、詳しく知ることができて良かった」と話す。

 2013年施行の障害者総合支援法で、131の難病(現在は332に拡大)の患者は、障害者手帳がなくても就労支援事業所に通うことなど障害者向けの福祉サービスを使えるようになった。

 難病を公表して就職活動すれば、障害者枠にも応募できる。ただし、障害者の法定雇用率を計算する際には算入されない。池乗あずさ支部長は「雇用率を達成したい企業は、手帳のある障害者を優先しがちだ」と声を落とす。

 一方、企業は難病患者を新たに雇用し、週20時間以上働いた場合に、賃金の一部に相当する雇用開発助成金を得られる。

 昨年度、病気を公表して就労した難病患者は全国で1752人。就職活動をしていた4割程度で、障害者の就職率より低い。厚生労働省は本年度中に、専門の難病患者就職サポーターを全都道府県のハローワーク1カ所ずつに配置。「就職の面接で、病気についてどう伝えたらいいか」などの患者の悩みに答えたり、面接に同行したりする。

 日本難病・疾病団体協議会の水谷幸司事務局長は「企業は難病を恐れないで。周囲が症状を正しく理解し、少しの配慮があれば、十分に力を発揮し、企業や社会に貢献できる患者はたくさんいる。難病患者を生かせないのは、社会にもマイナスだ」と指摘する。

(佐橋大)

難病患者のための就労支援の勉強会で、患者ら(手前)に支援制度を説明するハローワーク職員=名古屋市内で
難病患者のための就労支援の勉強会で、患者ら(手前)に支援制度を説明するハローワーク職員=名古屋市内で